第33話 覚悟の涙 ページ34
「あー、ただいまー。」
sellyの声が玄関から聞こえた。
疲れてるのか、声は少し低い。
「あっ、selly!おかえりー!」
キッチンから声をかける。
そろそろ夕飯の時間が近づいたので、先程決定した照り焼きを作っているところだった。
sellyはこちらを確認すると、目を逸らさずに真っ直ぐ歩いてきた。
「え、ちょ、なになに。」
無言で抱きしめてくるsellyに驚きを隠せない私は、恐る恐る火を止めてさいばしをおいた。
「好きだ、A。」
突然の告白。いや、告白というのだろうか。
肩に水の感触を味わった私は、慌ててsellyを抱きしめ返した。
「ど、どうしたの?mondoになにか言われた?」
ジワジワと肩の水模様が広がる感覚がする。
sellyは抱きしめる力を弱めるどころか、徐々に強くなっている。ついには鼻をすする音まで聞こえてきた。
「ほんとにどうしたの?ちゃんと言って?」
両手で覆いきれないほど大きな背中を、全力で手を伸ばしてさすった。
「お、俺は...Aが好き、なのに。閉じ込め、て……グス、好きなんだって...。」
詰まり詰まりでも、少しずつ言葉を発するselly。
何度も好きと言ってくるその姿が、昔の彼氏と重なってすこし寒気がした。
sellyは、元カレじゃないのに。
分かっているのに。
どうしてこんなに、怖いんだろう。
もう既にぐしょぐしょになってしまった服も気にせずに、私はsellyに過去の話をした。
「selly、あのね。私は昔、酷い彼氏が居たの。」
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黒川かぐや(プロフ) - 好きです、こんなに設定とか、キャラの新庄とか、書かれていて尊敬します!ほんとに面白いです!この作品を書いて下さりありがとうございます😖🫶🏻💕︎︎ (7月16日 2時) (レス) @page36 id: 5ae6456499 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:anesamaya | 作成日時:2022年11月14日 12時