２１ ページ21
＊
数センチだけ彼の顔が離れる。
普段の様子からは想像もつかない、
甘い声が耳元で聞こえた。
「……ごめん、俺、島崎さんのことすき」
すき。
…すき？
「…わ、わたしのことがですか？」
「うん」
「…ファンサとかじゃなくて、」
「ほんとにすき」
腰に回った手に、力が込められる。
苦しいのはそのせいじゃなくて
そらるさんの発言のせいで、
心臓が痛いも、”すき”のせい。
「リスナーだから良くないのもわかってるし俺の気持ちは言わないつもりだったけど、そんな事言われて我慢出来る奴いないって…」
弱々しく告げられるそれ。
「……」
「……ほんとに、ごめん」
何回も謝るそらるさん。
そんな彼に、私は衝動に駆られて言ってしまった。
「う、うれしいから謝らないでほしいです！友達が言ってました、芸能人と一般人が付き合うみたいに歌い手とリスナーもいいんじゃないのって。だから、負い目を感じる必要はないんじゃないかな、なーんちゃって…」
はは、と乾いた笑い声が口から出てくる。
私が言ったあと沈黙がやってきて、
それは数秒とも数分ともとれる時間だった。
多分、本当は短い時間なんだろうけど、
今の私からしたら、長かった。
「……ん。そ、っか」
一度、軽く私の背中を叩いてから
回していた腕を解いて私から離れる。
三歩くらい歩いたそらるさんは、
急に振り返って、笑った。
「じゃあ、よろしくね？」
「……え、なにを」
「俺の彼女、なってくれないの？」
何でもなさそうに、そう言うもんだから。
「絶対なります！！」
「もう、声でかすぎ」
「聞こえなかったら困ると思って」
「こんなに静かなんだから聞こえるよ」
「……もしかしたらそらるさんのも聞こえてたかもしれないですね」
「…それはない」
「自信なさげじゃないですか」
差し出された手を握って、
笑い合いながら夜道を歩いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 594人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
逸ノ瀬 - 自分も好きな人誰って言われて「そらるさん」って言ったら『あ〜またそういう2次元系のやつね』って言われました。まとめられました。2次元じゃないし。…作品面白いです！ちなみにリスナー歴何年でしょうか、先輩！笑 (2019年9月22日 19時) (
レス) id: b4696e59a0 (このIDを非表示/違反報告)
ななせ.(プロフ) - 雨月さん» わあああ、きゅんきゅんしていただけるなんて書いて良かったと思える言葉1位ですよーー！！（笑）ありがとうございます！！！ (2017年9月3日 21時) (レス) id: d00bf32205 (このIDを非表示/違反報告)
雨月(プロフ) - すごく面白くてキュンキュンとまりませんでした！！完結おめでとうございます！！！大好きです！！ (2017年9月3日 19時) (レス) id: 622eb7f148 (このIDを非表示/違反報告)
ななせ.(プロフ) - あめあがり＊さん» ありがとうございます！面白いって言ってくださって感謝です（泣） (2017年9月3日 17時) (レス) id: d00bf32205 (このIDを非表示/違反報告)
あめあがり＊(プロフ) - コメント失礼します！完結おめでとうございます！！面白くて一気に読んじゃいました(；∀； )とても面白かったです！ (2017年9月3日 16時) (レス) id: da3e9b76ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななせ. | 作成日時：2017年8月1日 18時
