ヤト家２【坂田銀八】 (ページ23)

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３０日目：好きの度合い。ページ23

「土方くん、総悟くんは…。」

Aが昨晩、妙の家に泊まるって言って、
今朝帰ってきてから、何かがおかしかった。

「…部屋の鍵閉めて、出てこねェ。」

「そっか。…とりあえずご飯、届けてもらってもいい？」

「あぁ。」

Aの浮かねェ顔、沖田クンの急な引きこもり。

「A。」

「いやぁー。荷物持ち頼んじゃって悪かったね、銀八。
お駄賃に好きなアイス一個好きなの選んでいいから。」

「お前、沖田くんと何かあったろ。」

夕方、Aとスーパーに向かって歩いてる時に聞いた。

「…うん、あった。」

俺の少し先を歩くAは足をそろえてぴたりと止まり、
俺の方を振り向かずにポツリとそう言った。

「…たまにゃ、遠回りで行くか。」

「うん。」

今度は、隣に並んで歩いた。
途中にちっせェ神社を見つけるまでは、
何も話さずにただ手を繋いだまま。

「わっとっと！」

「っと…あぶなっかしいなー…。お前、いくら運動音痴でもそりゃねえだろ。」

「ちょっとつまずいただけじゃん。運動音痴は関係ありませんー。
…後ろに引っ張ってくれてありがと。」

「どーいたしまして。」

俺の手からすり抜け、石段を駆け上ったらこの様。
さっきまで、俺の前で無理してると思ったけど、
このボケっぷりから見てそんなことはなさそうだ。

「銀八、今からすっごい恥ずかしいこと言うけどさ…
私ね、この赤い鳥居の横幅くらい、銀八が好き。」

「狭くね！？」

そして石段を上がり終わってすぐ、Aがそんなことを言い出した。

「これを見ても狭いって言う？」

そう言って、当然鳥居の横幅まで伸ばしきれない両腕をいっぱい広げるA。
それだけでも十分気は伝わってきたし、その行動が愛おしかったが、

「ばーか、そんなんじゃ足んねーよ。
…いいか？一回しか言わねェから、耳の穴かっぽじってよーく聞けよ。」

「うん」

もう、ひと手間。

「お前一人で一方的に好きの度合い語ってんじゃねェ。
そーいうの、俺が先立ってからいくらでも周りに言え。
…生きてる内にそうストレートに言われっと、心臓破裂して
いくらあっても足らねェから。」

Aを引き寄せて、顔を見ずに耳元でそう言った。
が、

「……」

反応ナシ。

「…おい、なんか反応しろよ。
スベッたみてェじゃねー…A？」

「やっぱり好き。
…総悟くんにキスされても、やっぱり銀八が…。」

「！」

口は笑っていたが、涙が頬をつたっていた。