犬と月 (ページ10)

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月の10 ページ10

言っちゃった。と思った。
でも岩本くんは、静かな声で続けてくれた。

「それ、お前やばくない？身体の調子悪い？」

「いや…、あの…。理由はわかってるから」

俺が、この気持ちを捨てればきっと治ってしまう。そんなつまらない理由。

口から出てしまったことだけど、これ以上はもう何も話せない。

岩本くんの視線を感じて、気不味くて、さっき渡されたDVDに目を落とした。

「それはさ…、言っていいのかわからないけど、ジェシーが関係してるの？」

…

…

…すぐに、答えられなかった。やっと言えたのは一言だけ。
「…そんなことない」

しばらく。
岩本くんは何か言いたげに口を緩めて俺を見ていた。
時間が、俺にのし掛かってくる。

俺は今すぐここから立ち去りたくて、もうすぐリハが始まるなんてありふれた言い訳をして、なんとかその部屋を出た。

不自然なくらい、足早に。

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