犬と月 (ページ8)

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月の8 ページ8

「わ・・・！あ・・・、岩本くん」

「ごめん、びっくりさせて。ていうか、それ。食べないでかれこれ10分くらいいじってるけど」
俺の手元で、ごはんがすっかり水分を吸ったカレーを指さす。
「あ・・・」
「そんなに残したら、またジェシーに怒られるんじゃない」
…ジェシー。

「あーー…、そうっすねー。ていうか、よく知ってるよね」
岩本くんは、目のなくなるいつもの笑顔でニコッと笑った。

「だって聞こえるもん。また残したあ！とかジェシーの声が」
「あいつ、声でかくて。…騒がしくて申し訳ない」
「ジェシーは心配なんでしょ。高地、また夏より痩せたじゃん」
「…そうでも…」
久しぶりに会ったのに、岩本くんは鋭い。確かに夏からまた2キロ痩せていた。
ジェシーはどうかな。痩せたと言われたことはないから、気付いてないのかも。

「ふーん…。あ、ねえ。もし食べ終わるんだったら、今俺の楽屋に来ない？ちょうど、前に言ってたDVD持ってきてるから貸すよ」
「え？」
「ほらほら、それ、さっさと片付けな」
「え？あ、う、うん」

痩せたことをそんなに広げられなくて助かった、とほっとしながら。

岩本くんのやわらかい声にせかされて、俺は慌ててカレーの皿を片付けて岩本くんの後についていった。