犬と月 (ページ7)

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月の7 ページ7

車の外を流れる景色みたいに、季節は変わっていく。

今年も、毎年恒例になりつつあるJrとしての舞台が始まった。

出番がそれぞれ違うから、リハの合間に各々場所を見つけて昼めしを食べることになっている。
メンバーのうち数人は個別の仕事があったりもして、相変わらず食欲のない俺は少し遅めに席についた。
ジェスは、専属をやってる雑誌の撮影に出てる。

味がしないご飯を食べるのは苦行だ。食べなきゃ、と思うから口には入れるけど皿の中身はなかなか減らない。
とっくに昼飯時は過ぎて静かになった共用スペースでは、俺のほかにはスマホをいじっている２、３人がいる程度だった。

10月、11月は夢のように過ぎていった気がする。でっかい広告が駅に出て、MV撮って、生配信、合間に動画を上げて・・・
数日後には初めてのフェスもある。
物事がでかくなっていくのは望むところだけど、これまでのこともあるから浮かれたりはしないし、逆にしっかりやらなくちゃ、ていうプレッシャーがある。

だから仕事に集中しなくちゃ・・・と思うけど。

目の前のレトルトカレーにスプーンを入れて、ごはんを崩す。

カレーっていえば、昔ジェシーと喧嘩したな。
ライブの合間に食べようとして、でも
食べきれないから一緒に食べよってお願いしたら、全部俺が作らされて。

「ジェシーも手伝ってよ」
「てつだう、てつだう。ちゃんと食べるよ、このジャガイモのとことか」
「そうじゃねえよ！作る方だよ！」

そんな他愛のない言い合いをいつもしていた。
いや、今もすることもあるけど・・・。

しゃく。また、カレーにスプーンを入れる。

「・・・あのさ、高地。さっきから何やってんの？」
急に、斜め後ろから、柔らかい低い声がした。