犬と月 (ページ22)

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月の15 ページ22

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「ずっとこのままなの？」

「…例えば俺とキスしてみるとか？」

ぼんやりとした暗闇が、さっきまでと同じ調子で言った。
まるで、明日も雨みたいだよ、みたいに言うから、
何を言われたのか一瞬分からなかった。

岩本くんの表情は見えない。

「…たぶん、できないと思います」

「そう？…ためしてみれば？」

ーーーキスしてみる？

ーーー何かを、変えてみる？

暗闇の精霊が囁く。

長い間、しまい込もうともがいていた恋を、
叶わなくても苦しくても共に居たかった恋を、
それでもこのままじゃ駄目なんだとどこかで知っていた恋を。

このままじゃ、自分が駄目なんだって。

考えに捕われて、声も出せずにいる瞬間

岩本くんが俺の手を引いて

キスをした。

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