犬と月 (ページ19)

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犬の6 ページ19

そして、すぐに自分で反問した。
おれ今、何を考えた？

こーちにキス？

触れた指先が、ずっとビリビリしてる気がして
自分の手を見つめる。

「もうこんな時間じゃん」
ふと気がついたようにこーちが言った。
確かに、ギリギリ終電に間に合うかどうか。

「どうする？ジェス、帰れる？
　…帰れなかったら、うちに泊まってもいいけど…」
柔らかく聞かれて、少し迷う。

いつもだったら喜んで泊めてもらうのに、今日は迷う。ほんとに迷う。

なんか、よく分かんないけど、このままこーちの部屋に泊まったらヤバイ気がする。

さっきのビリビリ、まだ残ってる気がする……

「えーと、今日は帰るわ。
　ありがと、また明日ね」
そう言って、いつも通りを装って駅で分かれた。

駅の改札の向こう、ちょっと首を傾けて軽く手を振る細いシルエット。

人混みの中、こーちだけがくっきりと見えて。

最後に軽く合わせた手のひらもビリビリして、
頭ん中は線香花火みたいに細い電気がパチパチ

その振動が心臓にも伝わって、
帰り道、ずっとおれを戸惑わせた。

その朝、彼女と別れ話をしたことなんてもう覚えてなんかなかった。

なんてことだろう。

この日からしばらく、こーちに触れると電気が走って

そしてようやく気がついた。

好きなんだ。

、