犬と月 (ページ17)

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犬の4 ページ17

知ってることは今日はオフってことだけ。
予定があって出かけてるかもしれない。
けど、会いたい。

駅に着いて、履歴の上の方に残る名前をプッシュする。
会いたいな。
お願い、出て。

『……もしもし』
数回のコールのあとで、舌ったらずな優しい声が聴こえた。
『どしたの、急に』
「んー、こっちに来る用事があったからさ」
嘘を付く。
「何してんの。ね、今から会えない？めし、食いに行こうよ」
どうしてもこーちを連れ出したいから、いつもより甘えた言い方で誘ってみる。
「こーちに会いたい」

ふふ…、て、囁くような笑いが聞こえた。

『……仕方ねえなあ。ちょっとだけな。いま、どのへん？』
やったあ。
なんだかんだ、おれには甘いこーち。知ってるんだ。ごめんね。

煉瓦のビルに、キラキラと光る、海に近いきみの街。
やがて現れたこーちと2人、おれらは落ち着いて話せる店を探しに連れだって歩き出した。

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期間にしたら長くはない付き合いの彼女のことは話したことがない。
おれって結構口がかたいからさ。

でもこーちはなんとなく知っていたふうで、
ああ、て短い反応のあとは黙っておれの話を聞いてくれた。

全部は話さないけれど。
付き合ったときの気持ち。
別れを決めたときの気持ち。
こーちは、小さな相槌を打ちながら、聴いてくれた。