パブロフ ページ11
「…ん…っ」
コイビトの時間。
久しぶりのオフだから、こーちとただ一緒に居たくて、こーちの部屋、ベッドの上でお喋りしてた。
何気ない話から、なんとなく手を伸ばしたら、
止まらない、甘い衝動。
とろんと伏せたまつ毛がヤバい。
……は、あ……
こーちとのキスは好き。
柔らかくて静かで、それがセクシーなの。
おれのぜんぶを受け止めてくれる安心感もある。
でも、今日はいたずらしちゃう。
ちゅ……
「…じぇ、」
ちゅ……
キスしながら、頭の後ろに回した手で、髪を梳く。
何度も、何度も。
パブロフの犬って知ってる？
あれみたいに、おれがキスしながら髪を触っていたら、
そのうち、こーちも髪を触られるだけでキスしたくなるんじゃないかと思って。
あまり、そーいうこと言わないからさ。
こーちからその気になるとこが見てみたい。
…バレたら絶対怒られると思うけど。
「じぇ、す、もう…」
ちゅ、
「……ん……」
指をメッシュの髪に絡めて。
手のひらで乱して。
ねえ、このキスを覚えていてよ。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
「おーい、そろそろ時間だってよ」
「今日ってこのイヤモニでいいんだっけ？」
慣れた番組の本番前、大勢の楽屋で各々イヤモニのセットを始める。
いつもの様に、襟のある衣装のこーちを手伝ってイヤモニをセットしてあげる。
少し伸びた髪を耳にかけてあげると、
「…ちょ、ジェシー、もういいよ」
急に頭を振って、フイと避けられた。
「まだできてないって」
「大丈夫だって…、しんたろー！しんたろーってば。後ろ見てー」
「なあーんでしんたろーなんだよ。俺がやるじゃん」
突然つれなくされて、ムッとする。
しんたろーなんかに渡すか、と構わず続けようとしたら、
鏡の中のこーちと目が合った。
す、と逸らして長いまつ毛を伏せるけど、
おれには分かったよ。
目尻が赤い。
「…キス、したくなった？」
小さく、耳元で囁いたら、
「……ばか」
掠れた声がＹＥＳと言ってきた。
「イヤモニ、しばらくしんたろーにやってもらうから」
照れ隠しのつれない言葉もなんのその、
ジェスちゃんはめげないよ。
つれない態度と裏返しの好き
つれない態度と裏返しの好き
つれない態度と裏返しの好き
パブロフの犬みたいに覚えてるから。
だからね、
「後で100回キスしよ」
fin
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作者名：an | 作成日時：2019年6月28日 20時
