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復習 ページ48

五虎退視点


「よお、お二振りさん。熱心なのはいいが、あまり熱中しすぎるなよ」

久しぶりの出陣後、感覚を忘れないようにと鶴丸さんと手合わせをしていた。

あの時はこうすればよかった。

ここはこう振るったほうがいい。

なんて、刀種が違う刀同士でありながらも、試行錯誤しながら話し合い実践していると、開けたままの戸から薬研兄さんの声がして僕らは動きを止めた。

そちらを向けば腕を組んで呆れたような顔を向けてくる兄さんがいた。

「おお、薬研。主はどうした」

「大将は畑の草むしりだとよ。念のためにと思って様子を見に来ただけだ。すぐ戻る」

片手をひらひらさせて、さらりと笑った。
ずいぶん機嫌がよさそうに思う。
何かあったのかな、とぼんやりと考える。

ふと視線を上げてみると、天井の隅に蜘蛛の巣が張ってあるのが見えた。
よく見ればいろんなところに埃も積もっているようだ。
高いところに取り付けられた窓もくすんでいて、昼間だというのに薄暗いように思う。
光があるとすれば、薬研兄さんの立つ戸からくらいだろうか。
僕らの動きによって舞った埃がわずかな光に反射してきらきらと光る。
すーっと、腕から力が抜ける感覚を覚えた。
はふー、なんて詰まった息が口からもれる。

ここ、鍛錬場は審神者部屋からそこまで離れていない。
けれど、決して近いというわけでもない。
審神者部屋付近に張られた結界から、僅かに漏れる主様の霊力がギリギリ届く距離。

空気に混じった暖かな霊力が身体に染み渡る。

何か話していた二人が僕を見ている気がして視線を戻せば、鶴丸さんが器用に片眉をあげ困ったように微笑んだ。

「…五虎退、落ち着いたか?」

「え?」

何のことかわからず疑問符を浮かべていると、二人は顔を引きつらせ言った。

「自覚なしか?ずいぶん怖い顔していたが」

「大方、鯰尾兄さんのことだろ」

「…」

怖い顔をしていた自覚はないけれど、そんな顔だったかと両手でほっぺを包む。
図星を突かれ、かつ、真新しい記憶にむすっと頬を膨らませた。

今はあまり聞きたくない名前。

ほっとした心が急激に冷えていくのがわかる。
ありありと思い出される記憶に眉をしかめた。


「鯰尾藤四郎か。あの時“面倒な奴にあった”というのは彼のことか」

「ああ、つい、ばったりな。鯰尾兄さんは一兄にべったりだからな。いらんこと吹き込まれちゃかなわねえ。ほんと、面倒なのに会った…」

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彩香(プロフ) - ゆきむらさん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいですありがとうございます!!お応えできるよう、頑張ります! (2019年5月31日 22時) (レス) id: ac0ca94cff (このIDを非表示/違反報告)
ゆきむら - 初めまして。作者様の小説、最初から一気読みさせて頂きました。とても面白かったです!これからも自分のペースで更新なさって下さいね!応援しています! (2019年5月30日 3時) (レス) id: 98604c15ab (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - …さん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます。中々更新できていませんが、お応えできるよう頑張ります。ありがとうございます!! (2019年5月28日 12時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
- 此処まで一気に読みました、更新応援しています。 (2019年5月25日 14時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - ねむるさん» 返信遅くなりすみません!応援していただける分、出来る限り更新できるよう努力します!ありがとうございます! (2018年5月27日 22時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彩香 x他1人 | 作成日時:2017年7月16日 11時

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