似合わない話 ページ44
「憶測でしかないが、恐らく政府側…担当役人が1番怪しいか」
『担当役人?…あぁ、隠蔽工作的な……』
淹れてもらった茶を啜る。
手に馴染む温度に、部屋に差し込んだ陽の光。
落ち着く午後には似合わない話だな。
「それだろうな。こんな本丸を作った責任も、担当には課せられる。監督不行届って言ったらあれだが、大なり小なり被害がくるわけだ。自分の株が下がるなんて分かってること、進んでバラしたくはないだろうな」
話を区切り、もう一口含んで受け皿に戻す。
向かいに座る大将に目を向ければ、少しばかり難しい顔をしていた。
『そう……か?酷くなる前に言った方がまだ楽じゃないか?』
…まあ、何となく察してはいたが。
うーん、と唸る彼に目を細める。
「…正直者にゃ分からないかもなぁ」
『えっ、正直者ってわけじゃなくね?後々の方が言いづらくなるし余計怒られそう…』
怒られるなら早めに、短い方がいい。
願わくば取り返しがつくくらいが望ましい。
とのこと。
まあまあ、そりゃそうだ。
「そうだろうなぁ…だが、そう思わないやつだっているって話だ。隠してしまおう、無かったことにしようってする方が楽だろ?」
『…そりゃ、楽っつーか、怒られないならそれに越したことはないけどさ。まあ、…うーん、そっかぁ…そうだよな。自分がちゃんと見てなかったからって理由で命が関わってきたら…逃げたくもなるな。そんな責任重大な仕事就きたくねぇ…』
命……な。
どっちの意味だろうか。
これまでに死んだ審神者か、幾らとも知れないほど壊れていった同胞たちか。
…どちらも、か。
俺たちのことも“命”と称してくれる。
そんな彼の無自覚な優しさに頬が緩む。
それを隠すようにそれとなく片手で口元を覆う。
「責任のつかない仕事なんざねぇのさ。…っと、また話がそれたな」
『よくずれますなぁ』
にこにこと楽しそうに笑った。
つられて俺も笑う。
真面目な空気を嫌った春の風が部屋に舞い込んだ。
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彩香(プロフ) - ゆきむらさん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいですありがとうございます!!お応えできるよう、頑張ります! (2019年5月31日 22時) (レス) id: ac0ca94cff (このIDを非表示/違反報告)
ゆきむら - 初めまして。作者様の小説、最初から一気読みさせて頂きました。とても面白かったです!これからも自分のペースで更新なさって下さいね!応援しています! (2019年5月30日 3時) (レス) id: 98604c15ab (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - …さん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます。中々更新できていませんが、お応えできるよう頑張ります。ありがとうございます!! (2019年5月28日 12時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
… - 此処まで一気に読みました、更新応援しています。 (2019年5月25日 14時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - ねむるさん» 返信遅くなりすみません!応援していただける分、出来る限り更新できるよう努力します!ありがとうございます! (2018年5月27日 22時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩香 x他1人 | 作成日時:2017年7月16日 11時