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ギリギリ ページ35

謎のセリフを置いて出て行った薬研くん。
それを追いかけることなく、ボウルやらフライパンやらの洗い物を済ませる。

じゃーっという水音に掻き消されてか、後ろから忍び寄る静か過ぎる足音に気づきもしなかった。

「わっ!!」

『ぅぎゃっ!?!』

背後から肩をぽんと叩かれ、かつ耳元の大声はさすがに誰でもビビリそうな事ではないだろうか。

「はははっ!やはり主は驚かせがいがあるな!」

『えっ?!つ、鶴丸さん???あれ?えっ?』

愉快そうに笑う彼の顔と時計とを振子のように首を回し見比べる。

現在時刻は10時15分。
昼頃に帰ると聞かされていたため、あまりの速さに驚いてしまった。

「お、何か作っていたのかい?」

俺の手元の洗われた道具を覗き込む。
あ、水出しっぱなしだ。勿体ない。

きゅっと蛇口を捻り、水を止めてから再度鶴丸さんの方へ向いた。

『…あー、うん』

色んな台詞が頭の中を飛び交って、何を言ったらいいかわからない。
考えれば考えるほど訳の分からないものばかりが出てくる。

『け、怪我は?』

混乱した頭でよく考えずに発した言葉がまずそれだった。

きょとんとした顔で一瞬動きが止まった彼だが、スグに呆れたように笑う。

「俺は軽傷にも満たん。五虎退が中傷よりの軽傷だ。戻ったら直してやっ…!!」

最後まで聞かず、彼の腕を引っ張って部屋を飛び出した。

左右を確認し、短刀二人がいないことを認識。
後ろで鶴丸さんが何か言ってるが聞こえない。

また怪我してる。
あの時みたいに、泣いてるんじゃないだろうか。
青い顔して、震えて、必死に痛みを我慢して。


俺はゲートの方へ向かう。
が、突然腕を強い力で引かれた。

俺は人よりタッパのある方だと思うが、それをものともせずに引き止める力って相当だと思うんだ。

危うく後ろにひっくり返りそうになりつつ、寸でのところで踏ん張った。

『っ…!っ鶴丸さん?なにしてんの?早く五虎退…』

「頼むから落ち着いてくれ!ここを出れば君は危ないと何度言えばわかるんだ!!」

必死な面相の彼に怒鳴られるなんて思ってもみなかった。
そんな彼を見て言葉を飲み、ふと足元を見る。

以前、結界を教えて貰ったことがあった。
ここから先は絶対に出るなと念を押されていたところ。

埃をかぶった向こう側とそうでないこちら側。
定規で直線を引いたように綺麗に割れている。

ここが、結界のギリギリライン。
あと一歩でも踏み出していれば俺は死地に出向いていたのだと知る。

落ち着け→←自信持て



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彩香(プロフ) - ゆきむらさん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいですありがとうございます!!お応えできるよう、頑張ります! (2019年5月31日 22時) (レス) id: ac0ca94cff (このIDを非表示/違反報告)
ゆきむら - 初めまして。作者様の小説、最初から一気読みさせて頂きました。とても面白かったです!これからも自分のペースで更新なさって下さいね!応援しています! (2019年5月30日 3時) (レス) id: 98604c15ab (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - …さん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます。中々更新できていませんが、お応えできるよう頑張ります。ありがとうございます!! (2019年5月28日 12時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
- 此処まで一気に読みました、更新応援しています。 (2019年5月25日 14時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - ねむるさん» 返信遅くなりすみません!応援していただける分、出来る限り更新できるよう努力します!ありがとうございます! (2018年5月27日 22時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彩香 x他1人 | 作成日時:2017年7月16日 11時

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