もしもの話 ページ24
『せ、んじょう?』
「あぁ」
以前、話には聞いていた。
彼らは刀の付喪神。
歴史を改変しようと企む“歴史修正主義者”を阻止すべく過去へ赴き歴史を守る…だったか。
過去=戦場って事らしいから、歴史を守るために戦うんだろう。
こんなにも幼い子が、俺よりもか弱そうな青年が、得体の知れない何かと戦う。
もちろん怪我もするし、下手を打てば死ぬことだってあると言う。
お遊びなんかじゃない、本物の戦争なんだ。
『…』
俺は口を紡ぐ。
そう簡単に決断できやしなかった。
もしも、大怪我をして帰ってきたら俺はちゃんと手当してやれるだろうか。
パニックになって、何も出来ないかもしれない。
そうじゃなくても、何かミスをするかもしれない。傷を悪化させるかもしれない…。
もしかしたら、今と過去を繋ぐゲートにバグが生じてしまうかもしれない。
修理できればいいが、それまでは?
皆が危険なところで幾時を過ごす事になるんだろう。
いや、帰って来れるだけマシかもしれない。
もしかしたら、誰かが欠けてしまうかもしれない。
物言わぬ鉄に戻って、ただそれだけになって帰ってくるかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら…
皆が、帰ってこないかもしれない…。
考えてしまう“IF”の話は尽きることなく頭の中を埋め尽くす。
湯の中で、勝手に震える手を握り合わせ必死に抑える。
曲がってても、お飾りでも今は彼らの主。
上のヤツが一番ビビってちゃ情けないだろ。
止まれ止まれ、と何度唱えても震えは止まってくれなかった。
不安は徐々に大きく深くなっていく。
肩がずんと重くなる。
「…主、なにか不安があるのなら口に出すといいらしいぞ」
『っ…?不安?』
静かに水面を揺らしながら、少しばかり距離をつめてくる。
オウム返しする俺に柔らかな表情を繕い、無駄に明るい声で笑って見せた。
「あぁ、なんでもいい。今思っていたことを俺たちに教えてくれないか」
今思ったこと…。
こんな話をどうしろと言うのだろうか。
話したところでなんになるのか、めんどくさいやつだと思われるのがオチじゃないのか。
一度開きかけた口を結び直す。
『…いや、何でもないんだ。…薬研くんごめん、その話部屋に帰ってからでもいいか?』
視界の端に見えた鶴丸さんの顔が、酷く歪んで見えた。
「…あぁ、勿論だ。急に悪かったな」
やはりと言わんばかりの態度。
多分分かってたんだろうな。
『ううん、大丈夫。俺こそ悪かったな、気が付かなくて』
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彩香(プロフ) - ゆきむらさん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいですありがとうございます!!お応えできるよう、頑張ります! (2019年5月31日 22時) (レス) id: ac0ca94cff (このIDを非表示/違反報告)
ゆきむら - 初めまして。作者様の小説、最初から一気読みさせて頂きました。とても面白かったです!これからも自分のペースで更新なさって下さいね!応援しています! (2019年5月30日 3時) (レス) id: 98604c15ab (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - …さん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます。中々更新できていませんが、お応えできるよう頑張ります。ありがとうございます!! (2019年5月28日 12時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
… - 此処まで一気に読みました、更新応援しています。 (2019年5月25日 14時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - ねむるさん» 返信遅くなりすみません!応援していただける分、出来る限り更新できるよう努力します!ありがとうございます! (2018年5月27日 22時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩香 x他1人 | 作成日時:2017年7月16日 11時