友達ってなんですか？教えて貰っていいですか？ 【刀剣乱舞・男主】

大事にしたいヒト ページ22

「ひぇ」

わざとらしい、と言うかあざとい小さい悲鳴。
ぴとりと俺の横にくっ付くこの子はほんとに可愛い。

『五虎退ビビらせんなー』

間延びした声でそう言うと、隣でくすくすと五虎退が笑う。

目をぱちくりとさせる鶴丸さん。
からかわれていると理解しているか、焦った表情で声を上げた。

「まて五虎退！君絶対ビビってないな！ここの君はそこまで臆病でないだろう！」

「ぼ、僕怖いですー」

『ほら、怖いってぞー』

きゃーっと女の子のような声で腕に手を回す。
そんな五虎退を抱き寄せる。

鶴丸さんが、うぐっと言葉を詰まらせる。
湯のせいか、赤い顔をしていた。

「嘘付け！」

「ひえぇぇ、主様ぁ」

『あははっよしよし五虎退。大丈夫だぞー』

「主！君も面白がってるだろ！」

くそー！っと水面をばしゃばしゃと叩く。
子供か。

「ふふふっ、じゃあ僕はあがりますね」

一通り鶴丸さんをからかい終えてすぐの事だった。
カラスの行水じゃないか…。
風呂が嫌いってわけでもなさそうなんだけど、次の人が入ると思うと心做しか早めに行動する様だ。

『あ、そうか…。やっぱり薬研くんも一緒に入ればいいのにな』

心配症過ぎねぇ？と愚痴をこぼしてみると、困ったように眉を下げる五虎退が目に入った。

そんな顔させたかったわけじゃないけれど、ゆっくりするなら皆一緒がいいと思う。

ふたりだけ妙に気を遣って、ゆっくり出来ていないんじゃないかと心配になる。

ぱたぱたと忙しなく脱衣所へ向かう五虎退を見送る。
ガタンと立て付けの悪い木製の引き戸が閉められると、鶴丸さんが口を開く。

「主、好きにさせてやってくれないか？」

『鶴丸さん…』

彼はこちらを向くことなく、天井を見上げて静かに語る。

「多分な、初めてなんだよ。二人にとって大事にしたい主ってのが」

『大事にしたい主…？大袈裟じゃない？』

「何を言うか。これでも控えめに言ってる方だ。人間には憎悪や嫌悪しか抱かなかった。そういう環境だったんだ。そんな中で君に出会って、優しさというものを受けて愛を知ったんだ」

愛…？
スケールが大きすぎやしないか？

『…そんな大層なことしてないんだけど…。そんなに価値のある人間ってわけでもないし』

手のひらをピンと張り天井に向けてかざす。
古びた照明の明かりが指の間から零れる。

「謙遜するな。ま、それでこそ君なんだがな。自覚があれなかれ、君のそういうところは良くもあり悪くもある」

ふっと溜息のような息を漏らした。

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