そう思ってはくれないか ページ34
ぐるぐる巡る頭に耐えきれず、だんだんと視界が歪んだ。
そんな俺を知ってか知らずか、俺の言葉を待つことなく口を開いた。
『だから、償いとか罪悪感とか忠誠心とか…そんなのじゃなくて…。なんだ、その…』
照れ臭そうに視線を外し、軽く頬をかいた。
『普通に、俺の側に居たいって思ってくれないか？仕える側としてじゃなくて、友人として』
一瞬、時が止まったように感じた。
すぐには理解出来なくて、でも内から込み上げる本音は嬉しさで溢れている。
「…は…？」
やっとの思いで口から出たのは、何とも情けない阿呆らしい声だった。
そんな事すら気にする暇などなく、頭は必死に理解しようと動いていた。
なんてことだろうか。
夢ではないのだろうか。
彼は俺を臣下としてではなく、友として隣にいてほしいと言ったのだ。
「っ…」
あぁ、やはり彼は馬鹿だ、阿呆だ。
俺は所詮道具、人斬り包丁だ。
それはどうしようもない事実なのだ。
それなのに…知ってもなお、友でありたいと言ってくれるんだ。
その言葉も嬉しかった。
けれど、本当に嬉しかったのは、蔑まれ続けた俺たちと、対等でいたいと言ってくれる心が嬉しかった。
温かい、暖かい…。
あたたかすぎて、涙が出る。
人の体とは不思議なものだ。
悲しくても怖くても涙は出るが、嬉しくても出るものなのだな。
こりゃ驚いた…。
五虎退のこと言えないじゃないか…。
泣き虫なのは俺の方か…？
自虐的に笑い、溢れる涙をこらえる。
それだけで精一杯で、言葉なんぞ出てこなかった。
何も言わぬ俺を不安に思ったのか、形のいい眉を下げ、ダメか？と弱々しい声で言った。
勿論、断るなんて選択肢は俺にはない。
駄目なわけない、あるわけない。
寧ろ本当にいいのだろうか…。
本当に俺でいいのだろうか。
こんな、こんな俺で…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 930人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩香(プロフ) - こすさん» お恥ずかしいですすみません。すぐに修正させていただきます！ (2017年7月21日 13時) (
レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
こす - 真名＝まな だと思う (2017年7月18日 20時) (レス) id: 504739afed (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 晋陽さん» 返信、大変遅くなり申し訳ございません！コメントありがとうございます！頑張ります！ (2017年5月2日 12時) (レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - 続きがとっても気になります!がんばってください！ (2017年4月30日 17時) (レス) id: 698e01f38a (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - まーさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると本当に嬉しい限りです！透明ララバイの方は更新が途切れてすみません。少しずつではありますが更新していきます。ありがとうございます頑張ります！ (2017年2月26日 20時) (レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩香 x他1人 | 作成日時：2017年2月15日 21時
