後ろめたい思いと彼の気遣い ページ3
「何をしているんだ？」
すすすっと彼の横に体を忍ばせる。
手元には芋やら人参やらが入った小さめの鍋。
甘じょっぱい香りが鼻をくすぐる。
『見ての通り朝飯の支度だよ、何時もより早く準備したつもりだったんだが少々手間取っちまって』
「…傷か…？」
顔だけをこちらへ向けて、困ったようにはにかんだ。
理由はわかっていた。どうであれ俺が原因なのだろう。
気まづく、彼から目を逸らしぐつぐつと煮立つ鍋に目を向けた。
『はは、いやいや違うって。寝不足でちょっと疲れてただけなんだよ、どうも捗らなくてな』
同じことだ。
痛みで眠れなかったと、そういう事なんだろう。
新しく知った。こいつは変なところで気を遣う。
はっきりと言えばいいものを、こうして庇って悪くないと言われてしまえば、償うことだって出来やしない。
いっそ、責めてくれた方が楽なんだがな…。
「…悪かった」
『それは昨日散々聞いた。別にもういいって言ってるだろ？痛み止めも薬研って子から貰ったし、平気だよ』
菜箸から手を離して、俺の頭に手を乗せた。
大きくて温かい手だ。
少しごつごつとしていて、男らしい手だ。
ぐりぐりと乱暴にかき混ぜる。
それに、と彼は続けた。
『謝る相手は俺じゃない』
ｰｰｰｰｰｰ『もう…おしまい。あいつに…ごめんなさいで…おしまい…な？』
あの時、たしかに彼はそう言った。
自分は関係ない、何もしていない、されていない…。
自分に謝る必要は無いんだと、そう言いたげな目だった。
「そう…だったな…」
わかってる。謝らなくていい、大丈夫だからとそう言いたいんだろうけれど、俺からしたら、許すつもりは無いと…そう聞こえてしまうんだ。
目を伏せ何も言わない俺に、彼は何かを差し出しながら声をかける。
『…ほら』
顔を上げれば、菜箸で摘まれた…芋？
ど、どうしろと…？
戸惑っていると、口を開けろと言われたので素直に従えば、口の中につっこまれる。
「んっ？！」
『はは、どうだ？味ちゃんと付いてるか？』
ほくほくとして、汁を存分に吸った芋だ。
濃すぎず薄すぎず、食事をまともにとったことのない俺でも分かる絶妙な味。
「…味については…よく分からんが…旨い…と思う」
『お、そりゃ良かった』
じゃあ俺もー、なんて言ってひとつまみ食べる。
彼なりに元気付けようとしてくれたのかもしれない。
勝手にそう解釈しておこう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 930人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩香(プロフ) - こすさん» お恥ずかしいですすみません。すぐに修正させていただきます！ (2017年7月21日 13時) (
レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
こす - 真名＝まな だと思う (2017年7月18日 20時) (レス) id: 504739afed (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 晋陽さん» 返信、大変遅くなり申し訳ございません！コメントありがとうございます！頑張ります！ (2017年5月2日 12時) (レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - 続きがとっても気になります!がんばってください！ (2017年4月30日 17時) (レス) id: 698e01f38a (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - まーさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけると本当に嬉しい限りです！透明ララバイの方は更新が途切れてすみません。少しずつではありますが更新していきます。ありがとうございます頑張ります！ (2017年2月26日 20時) (レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩香 x他1人 | 作成日時：2017年2月15日 21時
