紅一点/橙/2020/誕生日 ページ4
彼には帰宅ルーティーンがある、
それをしっかりと守る、そんな人だ。
どんなに酔っ払って帰ってきて何も脱がず
そのままベットに飲まれる、なんてことはない。
元気印のおてんばボーイは
初めから
ガチャガチャ、
鍵が開いてドアを閉じ、
鍵を玄関のキーボックスに入れて、
そのまま洗面所で手と顔を洗って、
ジャケットを脱いでラックにかけて、
スマホを片手にソファになだれ込む。
『ただいま、』
その合図とともに
わたしが冷蔵庫から
ペットボトルのコーラを出して渡す、
ここまでがいつもの流れだ。
「コンタクトの度、弱い？」
『んー、、や、ふつう』
昨日、ニコニコと画面に顔を近づけていたのを
思い出して言えば小さくボソッと返ってきた。
これは気にしなくても大丈夫かな。
イメージ通りじゃない、どっちが本来の姿か、
と言われると困るんだけど。
どっちも、だ。
いつしかのインタビューで答えていた。
「ファンの皆さんが作ってくれた
も全部俺だから、ちゃんと愛したいなと思う」と。
楽しみにしていたバンドのライブが
無くなってあからさまに凹んでみたり、
楽屋で音漏れしながらゲームをしてみたり、
そんな姿はスイッチが入っているときくらい。
家にいるときの大貴なんて、
テレビですべて出しきったかのように喋らない。
かといって、コーヒーが飲めるわけでもないし、
(実際のところ、コーラ飲んでるし)
クールで機嫌が悪いわけでもない。
まぁ口は悪いけど。
マネージャーの加藤さんから電話が掛かってきた、
と同時にメッセージが。
［ 二人で出て ］
まったく、大貴は今帰ってきたばっかりで
スマホ中だと言うのに。
「大ちゃん、加藤さん」
『はーい、なんすか』
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作者名：ヒロイン症候群 | 作成日時：2021年5月12日 15時
