もしも君のための世界なら (ページ28)

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誕生日/青/不安ページ28

いつからか、Aに、距離を置かれるようになった。明確に、いつだったかは覚えていない。去年の夏には、確かにそうだった。

元々、ベタベタするタイプでもないし、そこまで気にすることでもないかなと、放置していたら、あっというまに１年が経っていた。

大きな喧嘩もなく、小さな喧嘩もなく、記念日と行事だけほんのりと過ごして、ただ何もないまま、１年が経っていた。
気がつけば、付き合って４年目の夏が来た。

高校の頃なら、たぶんもっとがっついてたし、問いただしてたかもしれない。毎日連絡するわけでもなければ、全くなにもしないわけでもなかったけれど、元通りにするにはあまりに時間が経ちすぎていた。

【メッセージが届きました】

Aの親友からだった。初めは相談を聞いていて、そのうち、聞いてもらうようになって、何回か会っているうちに、もう訳がわからなくなっていて。

Aと会う回数を超していたことに気が付かなかった。会うだけならよかった。泣いてせがまれて、Aと重ねて、唇を奪った。

身体を重ねることはしなかったけれど、俺の中ではとんでもない重罪だった。会わせる顔がない。そう思えば思うほど、距離は開いていく。

Aの誕生日の前日、
家の前まで行って、立ち竦んだ。

スマホの時計をただ眺めていた。
合鍵でマンションのオートロックを抜けて、0時を迎える瞬間に玄関の前に立った。どうするべきかなんて、考え付かなかった。

そのまま、玄関の前で足が動かないまま、30分が経過していた。寝ているかもしれない。高校の頃は、誕生日を朝起きてからお祝いすることが多かった。大学生になってからは、そんなことはなかったけれど。迷って、迷って、

【留守番電話に接続します、発信音のあとにメッ】

【誕生日おめでとう】

〆