シンパパ/4歳/水/誕生日 ページ26
彼女が亡くなって早４年、
命日であり、
俺の誕生日であり、
愛娘、Aの誕生日でもある今日。
4歳になる娘と
同時刻の生活をしていたもんだから
12時の連絡なんて
気がつくはずもなく、ぐっすりと眠っていた。
「ぱぱー！」
「おーきーてー！」
「ゆー！おきて！」
顔をぺちぺちとする手が
ひんやりと冷たくて、目を覚ますと、
朝日がちょうど差し込んでいた。
この日だけは、
いっちょまえに早起きしてくるAに、
いつも寝起き悪いくせに〜〜
と悔しくなったりもする。
『Aさん、まだはやいよ』
「はやくない！ようちえんのじかん！」
ぱぱがおそい！と怒るAに、
えっ？と体を起こすと
時計は９時を指していた。
普段、幼稚園に行く時間だと言うことを
認識していたみたいだ。
『そっか、よし、おきるぞー』
「ー！！ぱぱだめー！おっきて！」
布団に潜り込むと
べしべしと布団を叩いて起こしてくる。
まだ舌ったらずなAは、
にこにこと俺を見上げて、
はやくはやく、と急かす。
誕生日のスケジュールは
Aが1歳になるときから同じで、
『よいしょっと、』
「おはようまま！あいいくよ！」
Aとふたりの家に
仏壇なんて堅苦しいものは置きたくなくて
リビングの壁一面に貼ってある
大量の家族写真の
ママの写真に挨拶をするのが日課。
暑いけれど、黒のシャツに着替えて
車に乗り、途中のSAで朝ごはんを食べる。
俺はラーメン、Aさんはうどん。
「ひとくちちょーだい、ぱぱ」
うどんも一口くれる？と聞くと
嫌そうな顔をしてから
渋々というようにくれる。
Aさんが選んだお花を買って
花束をいつものように置いて、
1輪だけは我が家に持って帰る。
「ぱぱ、」
『Aさんそろそろ帰ろうか』
「ねぇ、ぱぱ。」
『ん？』
「ままもね、おめでとうって」
〆
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作者名：ヒロイン症候群 | 作成日時：2021年5月12日 15時
