後輩/桃/橙/高校生 ページ24
侑季くんは、私のことが好きらしい。
『A先輩帰ろ〜』
「お、Aお迎え来てるよ」
「今日もラブラブですなあ」
「知念くん来週は部活来いって大貴が」
「あれ、知念くんだー。Aー！」
「あーはいはい聞こえてますー」
『大ちゃん先輩に来週は行きます！って』
伝えておいてもらってもいいですか？、そう言った侑季くんは、ニコっと笑ってくるりとからだの向きを変えた。ふわっと広がった髪の毛からシャンプーの匂いがして甘ったるかった。
『A先輩、ドーナツ、付き合ってよね？』
「え、あ、うん。新作出たもんね。」
話し相手は私しかいないんだから、わざわざA先輩なんて、呼ばなくても分かるのに侑季くんはいつも人手間掛けて話を広げてくる。
ドーナツなんてそこまで念押ししなくても付き合うし、そもそも君には『りょーすけ』という甘党のお友達がいるじゃないか。
いつしか、隣の席になった大貴くんが言っていた。幼馴染みだという大貴くんは、いつもは馬鹿やってるだけの癖して、お兄ちゃんのような顔をして
「知念、本当はすっげえ人見知りすんの。自分から話しかけてるとことか見たことないからさ、仲良くしてやってよ」
って。そんなこと言われたら私が断れないのわかってるじゃん。そのせいで大貴くんと体育祭実行委員までさせられてるんだから。無言の圧力、じゃないけど、きっと人見知りするのは大貴くんのほうだ。
『おーい、Aせんぱーい？』
「あっ」
『もー、僕の話聞いてなかったでしょー』
一歩前に出て、振り返って、あまりにも悲しそうに笑うから、ドーナツ奢ってあげるから許してよって言ってみたら。
『Aちゃん、わかってるの？』
「、」
わかっているから言わないで欲しい。その期待には、答えられないから。私に答えられるのはたった一言でいつも決まってるんだから。
『ドーナツなんてAちゃんと放課後デートするためのただの口実だよ。だから、ちゃんと僕の目見て？』
「侑季くん、」
「ドーナツ売り切れちゃったら困るから走るよ」
『ちょ！Aちゃん！』
ごめんね。
〆
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作者名：ヒロイン症候群 | 作成日時：2021年5月12日 15時
