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喉の手術。


以前からポリープのようなものはあって、
それが最近限界を感じるようになった。




朝、声が出しづらかったり、
掠れたり、
歌いにくさを感じたり。


それでも今までは様子を見ながら騙し騙しやってきたけど、
ここ最近はいよいよかなって感じになっていた。




そこで手術を決めたのが、
あのホテルで彼女とぶつかる前の日の晩だった。




俺が抜けてもバンドは続けて欲しい。
常々そう公言してるし、実際本気でそう思ってる。
だけど、このバンドは俺が作ったバンドだ。


あっさり諦めるんじゃなくて、
最後まで続けられるように
足掻きたい気持ちは当然ある。




だけど喉の手術だから、
もしかしたらそこで一遍にポシャる可能性がある。




足掻くことすら許されない突然の終わり。




ボーカルが喉を手術するということは
その可能性も無きにしも非ずだから、
手術を決めたあとは少なからず不安があった。




それがあの日の俺の
精神的な不安定さに影響していた。




「頑張って来いよ。
まあ、お前のことだから心配はしてないけど」

「いや、してよ。心配くらい笑」

「心配しなくても絶対戻ってくるでしょ。
洋平はそういう奴じゃん笑」

「まあね。もちろん絶対戻ってくるけど」

「お、いつも以上に決意と自信を感じるねー」

「うん、実は新しい目標も出来たし」

「そっか。じゃあ益々頑張んないとな」




心配なんかしていられない。
俺は必ず戻ってくる。


まだツアーを、
ライブをやりたい理由が増えたから。




ひとつのツアーに必ず何度か参加するという
名前も知らない彼女を見つけたくなってしまった。




無事、手術が終わったら
また歌いに行く。




そしたら君を見つけて、
あの時、指先に感じた想いを確かめたい。




え？そんな都合よく見つけられるかって？


でもそれはなんとなく
大丈夫な気がしてるんだよね。




だって俺たちが結ばれる運命なら
きっと必ず出会うから。





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