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出会い。 ページ1






「じゃ、私こっちだから」



普通の帰り際。



「うん、ばいばい」



あなたもそれに何の違和感も覚えない。



あぁ、心地が良い。

こんなにも普通が身に染みるとは。
相変わらず運のない自分が普通になりけている。


目覚まし時計が職務放棄をしたせいで遅刻をしたし、普段言われないスカート丈で指導を受けたし、お昼のウインナーは床にダイブしたし、放課後に明日の授業の準備を手伝わされるし。

唯一の救いは部活で遅くまで学校に残っていた友達の存在。


「ねぇねぇ〜」


とぼとぼと言った足取りで帰っていると、不意に前方から男の人に声をかけられた。
薄らぼんやりとした視界の中で捉えた人影。


「スマホ落としちゃってさ〜。一緒に探してくんね?」


現在時刻は午後7時。
男性をよく見ると、腕時計の僅かな光で探していた。

この状況がアブナイと分からないほどぽやぽや脳でも善人という訳では無いのだが、何故だか一緒に探すことを選択した。

いい事をしたから、もうこれ以上不運が続きませんように。そんな願掛けを含めていたのかもしれない。


「あ…はい…」

「はい、これ俺の番号ね。これに電話掛けて〜」

「は、はい」


手早く番号を打ち込むと、コール音が鳴った。
番号自体は嘘ではないようだ。


プルルルル、プルルルル…………ブツ。


数コールした後、音が途切れる。
結果は見ての通り。なのだが、



「あ、あっちから聞こえる〜」

「え、」

「早く早く〜」



本当に聞こえたのだろうか。
男が向かった先は、人目につかない、暗い場所だった。



「あの、ほんとに聞こえたんですか…?」



男は足を止め、私の方に向き直る。



「嘘って言ったらどうする?」

「え…?」



どうするも何も、警察を呼ぶしかないだろうが。

いやでもこれ自業自得だし…やっぱりか、という気持ちと恐怖でえ、あ、と意味の無い音を発した。


「俺と良いことしない?」


このケースでの良いことは絶対良くないことだと分かっている。怖い。怖すぎる。



「…ひっ、」



助けて。怖い。


そう呟いた時、




「…おい、」




ヒーローが来た。

オレンジの髪を揺らし、綺麗な青色の目をした、小柄なヒーロー。




「…だぁれ?」

「あ?誰ってそりゃ…」



か、彼氏だなんて言われたらどうしよう。なんて下衆で卑しい妄想も束の間、次の瞬間、私は笑いが止まらなくなる。




「此奴の保護者だ」




これが、私と彼の出会いだった。

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作者名:ゆちゃまる(サブ) | 作成日時:2020年4月12日 22時

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