あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ10)

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君の音ページ10

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冷えた体にかかるシャワーは少し熱くて心地良い。

しばらくすれば外から、制服洗っとくで、と声が聞こえてそれに返事を返す。

俺の幼馴染みはこの雨の中ちゃんと家に帰れただろうか。濡れてないだろうか。

風邪をひいてないか。

ヤスに、送ってもらったんだろうか。

自分で向こうに送り込んだクセにこんな思考が巡るのは惚れたが負けと言うやつだと思った。

重い頭を下に向けて出れば、そこに置いてあったのは灰色のスウェットと新品の下着。

腕を通せばどこかヤスの匂いがした。

確かにサイズはピッタリだ。

頭を拭きながら部屋に入ると、さっきこの部屋で発掘した限定版のCDが流れていて、口ずさむ彼女と目が合う。

｢お前、なかなかいい声で歌うな｣

｢、ほんま？かの有名な渋谷すばるに褒めていただけるなんて光栄やわ｣

｢ヤス知ってんの？｣

｢なにを？｣

｢歌えること｣

｢まだ知らん。これ私の武器やもん！秘密やで！｣

そう言うとタオルとスティックを取り出した彼女は流れる曲に合わせてカタカタと練習を始める。

安定したリズム感は努力の賜物だ。

俺は風呂上がりの1本に火をつけた。

紫煙と共に薄暗い心の闇を吐き出す。

｢ちょっと、吸うのはええけどこっちに煙吹かんといてや！私の美しい声に気使って！｣

｢何が美しい声やねん歌わんくせに｣

｢だから武器やねんってば！笑、さっき褒めたくせにほんま当たりキツいわ笑｣

｢なんやと？もっと吹いたるわ｣

｢わ！ちょ！｣

大きく吸って吹き付けた煙にケホケホと咳をする彼女を笑って短くなったそれをグリグリと灰皿に押し付けた。

睨む彼女を横目にぼふり、とベッドに横になる。

カタカタとリズムを取り続ける音が心地よくて目を瞑った。

頭が重い。

｢すばる？｣

スティックをタオルに打ち付けながら名前を呼ぶけど応答はない。

後ろを振り返るとベッドの上で布団にくるまったすばるはしっかり目を閉じていた。

寝たのか、と思いまた練習を再開する。

パタパタとタオルにスティックの当たる音。

小さく流れる私の課題曲。

この時間がとてつもなく好きだ。

｢なぁ｣

｢起きてたん｣

｢人を楽しませる音楽ってなんやと思う｣

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