あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ8)

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スウェットページ8

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たった5分の距離でもびちゃびちゃに濡れた私達は、笑いながら部屋に入ってドアに鍵をかけた。

真っ白なシャツはお互いに透けて、すばるは肌の色と筋肉の凹凸が目立っている。

急いで洗面所に走ってふかふかのバスタオルを玄関に投げると、上手く受取ったすばるは猫のように体を震わせた。

｢ここ住んでんの？めっちゃ近いやん｣

｢ええやろ？お風呂入れるからすばる入り？｣

｢お前が先入れや、お前ん家やろ？笑｣

｢ありがとう笑｣

ゴシゴシと頭を拭きながら靴を脱いで上がったすばるは靴下まで濡れていたみたいで、器用に歩きながら脱ぐとそれを私に渡す。

靴下を受取った私はそれを洗濯カゴに入れると、お風呂にお湯を沸かした。

寒そうに身震いしたすばるに暖かいココアを入れるとまるで女の子みたいに両手でマグカップを持つから、それに笑いながらクローゼットからスウェットを取り出す。

グレーの上下セットなそれは、いつも私の家に遊びに来る章大のものだ。

｢これ、｣

｢ええん？｣

｢いいよ。章大のんやからピッタリちゃう？｣

｢ヤスの？｣

｢うん。いっつもバンメン遊びに来るから｣

｢ふーん、ありがとう｣

スウェットを受取ったすばるはカバンからタバコを1箱取り出した。

少しよれているけど新品なそれはまだビニールに包まれていて、パッケージを剥いだすばるは1本取り出して咥えると赤いライターで火をつける。

やっぱり彼の学ランからしたのはタバコの匂いだった。

食器棚から最近お気に入りの猫の浅い器を出してローテーブルに置くと、驚いた様子のすばると目が合う。

｢え、？｣

｢灰皿。それあげるわ｣

｢いいん？｣

｢ええよ笑、可愛いやろ？猫やねんで｣

｢いや可愛いけど、お前変わってんな｣

｢すばるもやん｣

｢確かに笑｣

笑ったすばるはトントンと灰を器の中に落として、もう一度深く吸い込んだ。

ふぅ、と私の部屋に吐き出された煙は濃い匂いだけを残して目に見えなくなる。

そんな彼を置いてお風呂場に向かった私は、濡れた制服を洗濯カゴに投げ入れて暖かいシャワーを浴びた。

浴室に響く水音とは違って外でザアザアと鳴る雨の音は、しばらく止む気配がない。

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