あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ49)

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されど主観ページ49

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｢だいたいそんなん、ずるいやんか｣

｢亮、｣

｢一番大事にせなあかん本人は知らへんねやろ？向こうの子は知ってんのに、｣

｢うん｣

｢章ちゃんだって俺に先言うてさ、そんなん、そんなん、｣

上手く言葉が出ないけれどその切れ端が章ちゃんを傷つけているのは確かだった。

それでも根気よく俺の話に相槌を打つからどうしても彼を憎めない。

章ちゃんやって楽しそうに後ろ振り返ってギター弾いてたやんか。

目合わせて2人で笑いあってたやんか。

それで十分やったんちゃうの？

あれで良かったんちゃうの？

他に、なにが足りひんと思ってんの。

下唇を噛む。

それでも結局、どれだけ俺が嫌がっても最後の決断を下すのは俺じゃない。

｢A次第やんか、結局。俺に聞いても、俺がどんだけ嫌って思ってもAがそれでいいって言うんやったらそれしかないわ。｣

｢うん｣

｢もしそうなった時は俺は俺で、章ちゃんとちゃんと本気でやるし｣

｢うん｣

｢でも俺、ほんまにここが好きやってん｣

だからこそ。

｢Aに、任せるよ｣

彼女が嫌だと言うほんのわずかな確率にかけて。

彼女が章ちゃんを選んでもすばるくんを選んでも、俺は章ちゃんの敵にはなれないけれど、彼女の味方でいたいから。

結局は人づてに彼女があの子と入れ代わることになったと聞いた。

じわじわと胸を侵食する喪失感に無力さを知る。

俺は章ちゃんにも、そして彼女にも怒っていた。

自分の音にもっと貪欲にいて欲しかったのだ。

泣いて喚いても他には行きたくないと、ここで音楽がしたいと縋って欲しかった。

彼女がそう言うなら俺は全力でその気持ちを後押しするつもりだったから。

広いキャンパス内でその背中を探す。

別に怒鳴りつけるつもりは無い。

ただ、話がしたかった。

彼女の声で、その思いが聞きたかった。

｢待って｣

ゆらゆらと春の光に照らされる中で彼女の手首を掴む。

振り返った彼女はあくまで穏やかに柔らかく俺の名前を呼んだ。

｢亮｣

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