あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ48)

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仲間ページ48

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ゆっくり部屋を出て廊下を歩いた。

人の流れに少し逆らいながら人気のない方へと足を進める。

窓から大きな桜の木が見える。

花の間から少しずつ緑の芽が顔を出す姿はまだまだ控えめで美しい。

｢待って｣

ふと立ち止まると掴まれた腕。

今日は手を引かれるのが多い日らしい。

｢どうしたん｣

窓の隙間から舞い込んできた花びらを目で追えばそれがひたりとくっついたスニーカーから目線を上にあげる。

私を見つめるのはどこまでも真っ直ぐな瞳。

熱く仲間思いで、誰よりも曲がったことが嫌いな彼の。

｢亮｣

｢は？それどういう意味？｣

｢やから今度から｣

｢いやそういうこと聞いてるんちゃうやん｣

最初に章ちゃんの提案を聞いた時本当に何を言っているのか理解できなかった。

少しずつ染み込んでくるその考えに怒りが湧いたのは言うまでもなく、彼を初めて全力で睨みつけたのを覚えている。

｢それ2人は知ってんの？｣

｢まだ｣

2人きりの話の中でまだすばるくんとAは知らないと言う章ちゃん。

そうやって俺に先に話して外堀から埋めていって、彼は自分がずるいことに気づいていないのだ。

｢Aはいらんっていうこと？｣

｢そういうことじゃないやん｣

｢じゃあどういうことなん？｣

｢、｣

｢ほら、答えられへんやんか｣

あの子だって確かにドラムは上手だったし華もあった。

可愛らしくてポップな音。

すばるくんのバンドで輝く一輪の花。

でも彼女だって負けてはいない。

誰もが彼女の熱い音に振り返り立ち止まる魅力的な音だ。

例えばあの子が綺麗な色の花だとしたら、彼女は真っ暗な空に輝く月のような。

太陽のように花を咲かすことは出来なくても、誰にも必要で尊い光だ。

どちらも人々が立ち止まり心を惹かれる存在。

だから立ち代ることなんてできない。

それを1番分かってるのは章ちゃんだと思っていたはずなのに。

頭が痛い。

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