あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ47)

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絶望の産物ページ47

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欠伸をしながら頭を掻いた。

あまりにも濃すぎた1日を経て本当は俺が行きたくないぐらいだったけれど、彼女が来るなら俺がサボる訳にはいかない。

携帯で時間を確認して講義室に入れば感じた違和感に目をやると、幼馴染がキュッと服の裾を掴んでいた。

俺を支配する感情は見たことも無い不思議な色。

｢すばる｣

｢ん？｣

｢ごめん、｣

｢なにがやねん笑｣

怒りも憎しみもない。

でも自分から離れるのに謝るのは疑問だった。

そんな謝罪は聞かなかった事にして柔らかい毛を撫でる。

こいつに甘いのはもう治せないらしい。

彼女の隣でどうでもいい講義を受けながら時間が過ぎるのを待った。

何も咎めようとしない俺を伺う様子を見せながらもそれ以上何も言わなかった幼馴染は、静かに講義内容をノートに書き留めている。

こいつと俺とを繋ぐものは結局このどうでもいい、なんの役に立つかもわからない誰かの語りを聞く時間しかなくなってしまった。

それは同時にヤスと彼女もそうなってしまったのだけれど。

ヤスは彼女になんて声をかけただろう。

根はいい奴だからきっとそれなりに罪悪感があったはずで、本当は気遣いの出来る奴だからそれを伝える言葉もきっとできる限り慎重に選んだはずだ。

そして彼女はそれになんと返したんだろう。

ただ、あれ以上彼女が傷つくことはないと、彼女の絶望が唯一生み出した安心を抱く。

隣の席に座っていた章大が立ち上がって、いつの間にか以前より明るい色になっていた髪が揺れる。

昨日はそんなこと気づかなかったなぁと思いつつノートをリュックに入れて私も立ち上がった。

ゆっくりと、時間をかけて。

｢Aも部活？｣

｢うん。章大も？｣

｢うん、｣

｢そっか。頑張ろうな、お互い。｣

｢、うん｣

お互いという言葉に力が篭もったのは他の誰でもない自分のため。

じゃあ、と去っていた背中を見つめる。

その先に見るのは過去か、未来か、はたまた現在か。

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