あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ41)

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自尊心ページ41

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彼女に初めて会ったのは中学一年生の春のことだった。

仮入部の時、小さな背中に重たいギターを背負った彼女はその黒髪を靡かせながら遅れて部室に舞い込んできたのだ。

みんなの視線を集める中でおずおずと頭を下げて一番後ろに並んでいた俺の隣に立った彼女は、肩で息をしながらギターを下ろす。

その黒髪に絡まった桜の花びらを指でつまんだ。

振り返って首を傾げた彼女に笑いながらピンクの柔らかいひとひらを差し出したのを今でもよく覚えている。

｢ついてたで｣

｢ありがとう！名前は？｣

｢僕？丸山隆平｣

｢よろしく！わたしはーーー｣

若いと展開は早い。

次の瞬間には歯車は周り出して、彼女と一緒に2人の人生初めてのバンドを作りだした。

初めて聞いた彼女の音は爆発的で、鋭いのに繊細な熱い音。

｢まるちゃん！｣

｢ん～？｣

｢今んとこ！もう1回！｣

何度も何度も時間を惜しんで繰り返す練習にひたすら指を動かしてついて行く。

その時間が至福で、お互いの目を見て息を合わせる初めての一体感が心地よかった。

俺の音楽の始まりは彼女だった。

そして、彼女は俺が知る中で最高のギタリストのはずだったのに。

｢は？｣

ふつふつと沸き上がったのは怒りにも似た負の感情。

誰もが高校への進学を意識する時期になって、目の前の彼女は思いもよらない言葉を口にしたのだ。

｢高校入ったらドラムしたいねん｣

｢なんで？ずっとギターでやってきてたやん、｣

｢うん、でも新しいのやってみたくて｣

その目は彼女の堅い決意を表していて、想像していたものと違っていく未来に目を背けたくなる。

彼女はそれでも俺に同じバンドのベースとしていてほしかったようだったけど、俺は今更もう一度最初から違う楽器をするなんてことができると思わなかった。

半端になるくらいならこのまま彼女にギターでいてほしかったのだ。

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