あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ5)

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強く儚くページ5

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章大と組まれへんから、と笑った彼女の笑顔がとても悲しく美しかったことに、彼女の隣にいるヤスは気づいたのだろうか。

差し出された小さな手をギュッと握る。

この手があの力強いドラムの音を作るなんて驚きで、瞬きをしながら彼女の手をゆっくり離す。

｢ごめんなぁ、｣

｢ええよ、2人で楽しみ？最後やん！｣

最後なのは彼女だってそうだ。

優しい彼女はヤスだけでなく、俺の横に立って未だに赤い顔のままの幼馴染にもアフターケアを欠かさない。

気にせんといてな、と笑って、よろしく、と握手をした彼女の心情を思うだけで胸が痛んだ。

俺がいなければ、彼女はヤスの手を取って踊れていたかもしれないのに。

｢なあ渋谷くん、あんたアホなん？｣

｢すまん｣

｢いや違くて！！あの子のこと好きなんちゃうのって！！！｣

あの後用紙を書いて先生に届けに行った2人を見送った俺達は何となく2人のまま彼女のクラスの席に座ったわけで。

パンを頬張った彼女は俺を見ながらため息をついた。

｢好きやったら普通応援とかする？笑｣

｢俺はもうええねん｣

｢ええことないよ、人ってそうゆうもんやろ？｣

どうやら彼女は見かけによらず貪欲みたいだ。

俺のことを思って俺を怒った彼女は紙パックのオレンジジュースを飲み干すとパックを綺麗に折ってゴミ箱に投げ捨てた。

パタパタと顔の周りをはらってファイルから取り出したのは例のダンスペアを申請する紙で、黒いボールペンで自分の名前を書いた彼女は俺に用紙を差し出す。

｢こっち渋谷くんな｣

｢すばるでええよ｣

｢ん、こっちすばるな｣

貪欲でも、自分がヤスと踊れなくなったことを俺に怒るのではなく

俺が幼馴染と踊ろうとしなかったことに怒った彼女は強く、優しい。

凝り固まった心が、少しほぐれる感覚がした。

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