あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ33)

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たんぽぽページ33

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淡い青のレースが基調なドレスを着た栗色の髪の彼女を見た時に1回。

そんな彼女の手を取った時に1回。

俺達のペアが2位だと聞いて嬉しそうにはにかんだ笑顔を見た時に1回。

そして、真っ黒なドレスに身を包み、渋やんに姫抱きにされた彼女が現れた時に1回、俺の心臓は大きく音を立てた。

35番と呼び続けるアナウンスの中で誰もがその姿を探したのに、主役達は一番後ろの大きな扉から瞬く間に現れた。

一瞬遅れて湧いた歓声に彼らが笑い合うのが遠目に分かる。

黒いレースに映える白い肌の彼女がヒラヒラと手を振って、心の底から笑顔で彼の腕に抱かれている。

その耳元に揺れる鬼灯のピアスが嫌に目立った。

確かに渋やんと彼女は1位にふさわしく眩しい。

人の波を割って舞台に上がった渋やんはそっと彼女を下ろす。

楽しそうに抱きついた彼女をしっかり受け止めて彼はカラカラと笑った。

俺は彼女の肩からずり落ちたジャケットをただ拾う。

この感情は、なんだ。

初めは驚きと戸惑いで強ばっていた顔も、扉を蹴って会場に入ってしまえば幸福に満ちた。

久しぶりに見た彼女の100％の笑顔は冬を越えて初めて咲いたたんぽぽのように人の心を暖める。

他人に表彰されたり褒め称えられたりするのは好きではなかったけれど、今だけはそれも悪くないと思えた。

グランプリレディになった彼女は黄色と淡い青のドレスを着た2人の真ん中に立つ。

舞台の袖からキラキラと輝くティアラを持った役員が駆けつけて彼女の後ろに並んだ。

彼女は黒いドレスを摘んで持ち上げ、舞台を眺める生徒達に少し膝を曲げてお辞儀をすると役員の方を向く。

照明が落ちて、スポットライトはただ彼女だけを映し上げた。

強い光によってより煌めくティアラは屈んだ彼女の頭にそっと乗せられて、会場内が本日何回目かにもなる拍手と声援に包まれる。

照れてはにかんだ彼女の横顔を見ることができたのは3位以内に入った俺とヤスと亮の特権だ。

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