あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ31)

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このまま終われないページ31

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『27番！！』

か細い月明かりの中で2人で顔を見合わせた。

ヤスとあいつが2位？やったら1位は？

『1位』

息を飲んだ。

もしもその座を手に入れることができたなら、彼女の悲しみを少し紛らわすことが出来るかもしれないと。

『35番！！！』

｢すばる、｣

｢行くぞ｣

パンプスにもたついた足がもどかしくて、俺のジャケットを肩に掛けたままの彼女を横抱きにする。

驚いて俺の首に回った手もそのままに廊下を走った。

このままバッドエンドで終わらせてたまるか。

｢ここにおるんが俺で、ごめんな｣

少し俯いて揺れる前髪からすばるの眼が見えて、アホなこと気にしてんなと思った。

私は正直に、すばると踊れて良かったと思ってると言いながらその手を握る。

あなたの手を握ったのが私でごめんねなんて言えない私は、彼の優しさを知っている。

｢俺があん時ヤスのこと誘えってあいつに言うてへんかったら｣

やっぱり彼はそう言えたんだ。

好きな人の恋を応援できる強い男。

｢私は言われへんかったから。｣

きっと彼は私が優しくて強いと勘違いしていたのだろう。

私の、章大を応援できない醜さを知って欲しかった。

強い鉄の鎧に隠された誰よりも弱い心を。

醜い素顔を。

すばるはただ私の手を握り返してそれ以上その話題に深入りすることは無かった。

繋がれたままの手は暖かく、醜い私を見放さない彼の優しさに触れる。

ベストカップル賞の表彰が始まって、どこ入れたん？章大んとこ、なんて傷口を抉ってみて、私の指で遊ぶすばると月を交互に眺めた。

｢お前怖いんやろ、ほんまは｣

きっとわざと放たれたすばるの言葉は私の核心をつく。

｢聞いとかなあかん気するやんなんか笑｣

ザワつく心を抑えてヘラりと笑ってみせた。

肩にかけられたジャケットを空いている片方の手でしっかり握って、後はただ1位に27番が呼ばれるのを待つのみだったはず、なのに。

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