あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ19)

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しらないことページ19

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｢お邪魔します～｣

｢邪魔すんねやったら帰って～｣

｢はいよ～｣

｢もうええって笑｣

久しぶりに遊びにきたバンメンを部屋に通す。

章大と亮とベースの八木ちゃん。

みんな関西出身で八木ちゃんは亮の従姉妹だ。

｢なんかタバコ臭いねんけど！！不良！！｣

｢私違うねん！！すばる！｣

｢え！すばるくんここくんの！！？｣

｢うん、学校近いからとか言うて｣

すばるを尊敬してやまない亮のテンションの上がり方にみんなで笑った。

八木ちゃんが鼻をつまみながら高校引退ライブの選曲を始める。

あーでもないこうでもない、これとこれとあと？

｢章大は何がいいと思うん？｣

｢俺、は、やっぱりこの中に入れるんやったら上がるヤツがいいなあ｣

｢あの八木ちゃんの好きなやつは？｣

｢スラップ刻むやつ？｣

｢あれ上がるよなぁ！｣

｢あるで、聞こうや｣

｢俺だそか｣

章大が積み上げられたCDの塔に手を伸ばした。インターホンが鳴る。

久しぶりに足を踏み入れた彼女の部屋には彼の煙草の匂いが染み付いていた。

なんとも言えない感情を抱きつつ奥の部屋に進む。

ローテーブルの周りにみんなで腰を下ろし曲を選んでいる途中、テーブルの真ん中に置かれた猫の柄の器が目に入った。

綺麗に洗われているそれはどうしてこんな所に？

確か彼女のお気に入りだったはず。

｢章大は何がいいと思うん？｣

ボーッとそれを眺めていると彼女が俺に話を振った。

｢俺、は、やっぱりこの中に入れるんやったら上がるヤツがいいなあ｣

少し動揺しながら返答すればまた始まり出した会話。

少しずつ参加しながら俺は積まれたCDに手を伸ばす。

あれ？いつもこんなに綺麗に積まれてたっけ？

部屋に来ればいつもみんなで選んでいた聞いていたCDは、俺の知る限り床に折り重なって置かれていた。

少し気を使って掃除でもしてくれたのだろうか。

いや、もしかしたら彼が並べたのかもしれない。

なぜか憂鬱になりながら上から順に辿ればアーティスト順でもタイトル順でもなくて、俺は柔らかい笑みを取り戻した。

なんだ、やっぱり彼女が片付けたんじゃないか。

その時インターホンが鳴って、部屋主の彼女が返事をする前にドアがガチャりと開かれる。

その途端に俺も険しい顔に逆戻り。

アーティスト順でもタイトル順でもないCDの並びは、よく考えれば完璧な年代順だった。

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