あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ15)

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君だけページ15

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｢すばる！起きて！遅刻する！！｣

｢んん、大丈夫やろ、学校まで5分くらいやんけ｣

｢もう20分！｣

｢は！？！！？｣

揺らされる体と焦った声にガバッと体を起こす。

時計を確認すればまだ長針は真上を向いていて、タチの悪い嘘に舌打ちしながらベッドから出た。

｢お前いらん嘘つくなや｣

｢だって全然起きひんねんもん。シャワーは？｣

｢浴びる｣

｢はい、洗濯しといたから｣

真っ直ぐアイロンの当てられたカッターシャツを受け取って浴室にこもった。

2日間安静にして暖かく優しいスープを与えられた体は健康状態を取り戻していて軽い。

ふかふかのバスタオルで髪を拭いて、純白の戦闘着に身を包む。

このカッチリした服装が嫌いだ。

｢歯ブラシ新品のあるから出していいよ～｣

｢お～｣

硬めの歯ブラシで歯を磨いて部屋に戻れば彼女も完璧な戦闘態勢。

りんご！となんの前触れもなく口に突っ込まれた赤い果実にもごもごと言葉を失いながら靴を履く。

｢さあ行くぞ！ねぼすけ！｣

｢誰がやねん笑｣

空はすっかり晴れていた。

彼女と別れて教室の扉を開けると目に入ったのは、俺の幼なじみと楽しそうに談笑するヤスの姿だった。

今日は一緒に登校したんだろうか。

同じ机を架け橋に、向かい合わせに頬杖をついて楽しそうな2人。

確実に近づいているその距離感にズキズキと痛む胸の癒し方を俺は知らない。

柔らかい髪が、紅い頬が、伏せた睫毛の影が、細い体の線が、全てが俺の中で1番愛しかった。

いつまでも踏み出せない1歩は先日見たあの忌々しい夢と一緒だ。

意識の彼方でチャイムがなる。

｢あ！しぶやんおはよお！席借りてた！｣

｢おう、｣

俺を見て不思議そうに首を傾げたヤスは教室を出ていった。

それと入れ違いに幼なじみの前に座ると、おはようと朗らかに笑ったそいつは暢気に窓の外を眺める。

こんなにお前を愛しいと思う男が周りに2人もいるのに、それに気づく素振りもなく純粋に恋をするお前は世界で1番美しいと思う。

俺らしくない言葉で心に浮かぶ愛の告白はいつになっても表に出ることは無い。

そんな思考の中でふと浮かんだのは一人ぼっちの優しい彼女のことだった。

｢すばる？｣

｢、ん？｣

甘い声で名前を呼ばれればそれも頭の片隅へ。

きっと今、俺は相当だらしない顔をしているんだろうと思いながらさっきのヤスと同じように頬杖をついた。

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