あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ12)

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一粒ページ12

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息苦しい夢を見た。

俺の横で違う男のために真っ白なドレスを着た幼馴染はとても綺麗で、俺の傍を離れてゆっくり前にいる男の隣に並ぶ。

胸が痛い。

俺もそこから離れようと足を動かすのに地面から手が伸びてきて俺を掴んだ。

彼女から、彼女の掴もうとする幸せから逃げられない。

必死で藻掻けば藻掻くほどに強く引きずられて飲み込まれる。

もう抵抗するのも諦めた時、ヒヤリと額に感じた冷たさに意識が浮上した。

薄く瞼を開けばそこにはもう1人、俺のせいで俺と同じ境遇に立つことになった彼女が。

心配そうに俺を見つめる瞳。

先ほど感じたどうしようもない悲しみと、今感じた安心と、彼女への罪悪感で涙が目尻から滑り落ちる。

あぁ、18にもなってこんな風に泣くなんて、俺はなんて情けない男なんだろう。

｢すばる｣

｢、ん｣

優しい声でそっと俺を呼んだ彼女は細い指で俺の涙を拭った。

そのまま頬を滑って首に当てられた手は冷たくて気持ちいい。

小さく返事を返してゆっくり瞬きをする。

｢すばるはな、優しすぎんねん｣

｢ん？｣

｢風邪ひいて熱出てる、分かる？熱いやろ｣

｢ん、｣

一文字しか発せなくても俺の心を汲み取ったように微笑んだ彼女。

どうにも心細くて、その冷たい手に俺の熱い手を重ねた。

ギュッと加わった力にまた少し安心して目を瞑る。

全部全部優しすぎるのだと彼女はポツリと呟いた。

汗ばんだ熱い手を重ねてきたすばるは少し寂しそうに、それでいて確かに安心した様子で目を瞑った。

こんな時くらい我儘を言えばいいのに少し経って聞こえてきたのは柔らかい寝息だけ。

その寝顔は幼く、どこか儚い美しさを持っていて、章大とは違う系統ではあるけど綺麗な顔だと思う。

力の抜けた手をそっと解き、優しい味のスープを作ってスピーカーに電源を入れた。

小さく流れる音楽の中で私はまた昨日と同じように練習を始める。

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