あなたと私、ときどきあの子。【やすば】 (ページ2)

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あの子のことページ2

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もしかしたら私は彼が恋をする瞬間に立ち会っていたのかもしれない。

彼の想い人はふわふわのセミロングな茶色い髪にいつも柔らかい色のおしゃれな服を着ていて、物腰柔らかく親切で、可愛らしい人だ。

私達がライブで演奏する曲を決めていて、いい案が浮かばない日のことだった。

後ろから駆け寄ってきた彼女は章大の肩をトントンと叩いた。

章大が振り返ると、顔を赤くした彼女は俯きがちに髪を耳にかけながら青いボールペンを彼に手渡す。

その時に2人の手が触れて、彼女は困ったように笑った。

｢あの、落としてたよ｣

｢ありがとう｣

｢、ううん！頑張ってね！｣

彼女が立ち去ったあと、彼が提案したのは紛れもなく純粋な、暖かい恋の歌。

ズキリと音を立てたあの時の胸の痛みは、まだ忘れられない。

彼女はうちの高校で有名なバンドのドラム、時々ギターを担当していて、文系の日本史選択クラスだ。

その優秀な成績の噂は文理選択の違ううちのクラスにまで届く勢いで流れる。

容姿端麗才色兼備、なんて言われればもう私に勝ち目なんてなくて、でも諦められないのも事実だった。

私は生憎章大に｢彼女を誘いなよ｣なんて言う綺麗な感情は持ち合わせていない。

きゅるん、と可愛らしく首を傾げたままの彼に笑って、いいよ、と呟いた。

かっこいい章大に劣らないように素敵なドレスを選ばなくちゃ。

今日も彼女を思う彼と、帰り道を歩く。

この高校に入るために実家を離れた私は今は小さなアパートで一人暮らしをしている。

そこにはたまにバンドメンバー、主に章大が遊びに来て、朝までゲームをしたりマンガを読んだり勉強したりして毎日を送っている。

帰ってそうそうベッドに倒れ込んで携帯でパーティードレスを検索した。

彼の色である青を着ようかと考えたけど、目に映ったのはハイネックにノースリーブな黒のドレス。

デコルテから上はレースになっているエレガントなデザインで、スリーサイズを入力して購入ボタンを押した。

青を選べなかったのは何となく彼女が着るような気がしたからだ。

私と踊っている途中で彼女と比べられてしまえば、きっと彼は私の手を離してしまうだろうから。

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