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「大丈夫。大丈夫」
男の子はさっきとは裏腹に私に優しく声をかけて抱きしめるようにして背中をさすった。
私を助けてくれた人という事実が大きいのか、本能で"この人は大丈夫だ"と思った。
彼の温もりに安心してすぐに心を落ち着かせることができた。
私が落ち着いたのを察したのか彼は私から離れた。
「なんでこんな暗い時間に女の子1人でいるの」
「俺…僕が来なかったらどうしてたの」
問うような口調で尋ねた。
一人称を「僕」に変えたのは怖がらせないためなのかな、。
「早く家に帰ろうと思って、近道したくて…」
「じゃあ家近いんだ」
「ん〜…歩いて帰れる距離です、」
「送るよ」
さすがにそこまでしてもらうのは申し訳ないし、もう遅い時間だから大丈夫と断るとまた襲われてもいいの？なんて縁起でも無いことを言うから渋々お願いした。
それからはお互い何も話さずに私の家の近くまで来た。
「ほんとに、何からなにまでごめんなさい」
「いいよ。これからは夜1人で歩いちゃだめだよ」
「はいっ」
「ここで大丈夫です。本当にありがとうございました」
「はーい」
「あ、あの！」
「？どうしたの？」
「名前、聞いてもいいですか？」
帰ろうとしていた彼は言ってなかったね〜とのんきな様子で答えた。
「ジョンウォン。ヤンジョンウォンだよ」
自分の名前を言った後、そっちは？って顔をして首を傾げた。
「…A。AAです」
A…Aね、と確認するように何度か私の名前を呼んだ。
「"またね"。Aちゃん」
「気をつけて、！」
ばいばーいと手を上げて私が見えなくなるまで手を振ってくれた。
すぐに家に帰るとやっぱりお母さんが心配していたようで質問攻めにあった。
体の疲れもそうだけど、心の方が疲れていた私は上の空だったみたいでお母さんはご飯も食べずにお風呂に行った私を呼び止めなかった。
お風呂を上がったあとおやすみとだけ伝えて自分の部屋に戻った。
お母さんは3年前に父を亡くしてからより私に過保護になったと思う。
部屋の時計を見ると10時半を指していてぼーっとしていた頭がシャキッと目覚めるように我に戻った。
…さっきの出来事は私にとって大きなトラウマになった。
1人で帰るのは控えよう。
そういえばジョンウォン君、強かったな…。高校生なのかな。どこの高校だろう。
いろんなことを考えている内にいつの間にか深い眠りに落ちた。
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作者名：ちょこらー | 作成日時：2023年1月1日 23時
