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A「…ぁ、と、お母さん、ただいま…」
…当然、帰ってこない返事。
ぐっちゃぐちゃに散乱した服や、コスメに、引かれたままの布団で足の踏み場なんか無い。
ほんの少し残ったまま放置されたペットボトルに、割り箸の突き刺さったままのカップ麺。
…まともな生活じゃないのが一目で分かるその部屋で、立っているだけで呼吸が苦しくなりそうだった。
布団にくるまったままの母親の背に声をかけ続ける
…私の言葉なんかで、元に戻るわけがないのに。
A「あのさ、!ちょ、っと、調子悪くて、お店…休んじゃった
だから、あの…今日は一緒に……夕ごはん食べれるから、、」
焦って変に、捲し立てちゃうのは、母親の機嫌を伺ってるから。
A「お母さん、食べたい物とかってある…?」
___一緒に食べようよ、それで、私たちがこれからのこと話そうよ…!
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A「…料理は、お母さんみたいに上手じゃないから、できないけど。Uberしよ、それか、なんか買ってくるし…!」
嘘。あんな汚いキッチンじゃ、何もできないからでしょ。
本当のこと言えばいいのに、私。
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ねぇ、お母さん。私、スナックで働きたくないよ。
ねぇ、お母さん。バイトならするから、だから、大きな幸せなんて無くてもいいから一緒に居て、ちゃんと私のこと見てて。
ねぇ、お母さん。…………お願い、元に戻って。
全部全部、蓋をしてたはずなのに。
母親に対する意地悪な感情も、本音も全部がごちゃ混ぜになって頭の中をぐるぐるとまわり続ける。
お母さんに、良い子に見られたい
……もっともっと褒めて貰いたいから。
“頑張ったね”
“偉いね”
それだけで、いいから。
ただそれだけで、救われるんだから。
ごめんなさい、こんな、ワガママで。
…私を見捨てないで、助けて、お母さん。
ここから、引っ張り上げて欲しいよ。幸せな場所に。
じわじわと沢山の思考に、頭が埋め尽くされて
自分が混乱してるのが分かってるのに、逃げられない。
『…あんたのその“目”が嫌い。あの人にそっくり。なんでも分かってるみたいな目しやがって。』
ようやく口を開いた母親は、私の心をゆっくりと突き刺した
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『あんたなんか産まなきゃよかった』
真っ直ぐと突き刺さった言葉のせいで、
その言葉以外何も考えられなくなった
…嫌な予感って、これだったのかな。
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作者名:こひな | 作成日時:2023年9月23日 21時