6.タンドリーチキン ページ6
Aside
考え事をしすぎて少しのぼせた体。
冷えてくるとそれと比例してお腹が空いた。
３年前は2人で仲良く分けて食べたチキンを
一人きりで食べた。
A｢...っ。あれ。私なんで泣いてるの...。｣
涙が溢れ出してきた。
チキンの塩味がこくなったような気がした。
A｢会いたいよ...。｣
そんな時、優しい声がした。
一番聞きたかった声がした。
翔｢ただいま、A。｣
A｢っあ...翔くん！｣
ずっと待っていたんだ。
この温もりを、この香りを。
誰にも渡さない、私だけの翔くんの、
ずっと待っていた姿。
翔｢ごめん、A。毎日遅くて。｣
A｢いいよ、今日帰ってきてくれただけで嬉しい。｣
A｢翔くんとね、最初に食べたチキンも買ってきたんだよ、ケーキも！ねぇ、一緒に...｣
翔｢ごめん、明日も早いみたいだから今日はもう寝ていいかな？そのために帰ってきたんだ。｣
A｢えっと...、そうだよね。ごめん。｣
いいよなんて言って、
翔くんがベッドで熟睡するのを見て、
一人でまた悲しくなって、泣いて、
もう、こんな生活は嫌だと、
辛いのはいやだと、
家を出る決意をした。
夜のうちに荷物を詰めて、日が登る頃に家を出た。
閑散とした朝の街へ、
明日のクリスマスの準備と今日の尻拭いをする店員さんを窓から見て、
A｢さようなら...｣
ただそれだけ誰にも聞かれることもなく、
そっと鍵を閉めた。
もう戻ってこれないように鍵はポストに入れて。
涙に滲んた目じゃ、ベッドサイドに置いてあった指輪にも気がつけずに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さーちゃん | 作成日時：2017年12月18日 23時
