貴女のいないその未来は (ページ30)

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30.大好きな貴方へページ30

Aside

私はそれから必死にそのホテルに走った。

駅前にあるこの街で一番大きなホテルらしく、

和也とホテル選びをした時に候補になっていたけど、私がやっぱり旅館がいいなんて言ってやめたホテル。

無我夢中だった。

涙でお化粧はぐちゃぐちゃだし、

走っているせいで汗もすごいし、

今から誰かに会いに行くには最悪の状態。

だけど、それでも翔くんが逃げてしまう前に。

今日会えなかったらもう二度と会えないような気がした。

ホテルのフロントがお帰りなさいませなんて言ったのも耳に入らず、

ただ向かうのは貴方のいる125号室。

そしてそっとインターフォンを鳴らした。

翔｢はーい...｣

この懐かしい声が聞こえて、

思い音を立てて扉が開いて、

貴方と目が合った。

次の瞬間には私は翔くんに抱きついていた。

ただ、翔ちゃんだけの温もりを感じて。

翔｢はぇ...？えっと、A...！？どうしたの？｣

A｢翔くん...翔くんだ...｣

翔｢A...？｣

A｢こんなのすっごい自分勝手で、ダメだってわかってるんだけどね、

私、翔くんにまだ好きだよって言ってもらえて嬉しかったの。

私なんかもうどうでもいいって思ってるかなってずっと思ってたから。

でも、私からも言わせて、

さっき曖昧になっちゃったけど、

私ももう1度翔ちゃんと一緒に暮らしたい...！｣

翔｢...｣

A｢やっぱダメだよね、ごめん！なんか往生際悪くて！じゃあ...｢待って！！！｣｣

翔｢違う...ほんとに驚いて、嬉しくて、感謝でいっぱいで...言葉も出ないんだよ...｣

A｢えっ...？｣

翔｢A、僕と結婚を前提に付き合ってください。｣

A｢はいっ...｣

涙で滲んだ景色がぱっと少しだけ明るくなった気がした。