貴女のいないその未来は (ページ12)

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12.君の香りs.s ページ12

翔side

1人きり、冷たいベッドの上で目覚めた。

いつもなら隣でAが寝てて、

その寝顔で少し元気が出て、

今日も一日頑張ろうと思うのに。

翔｢Aー？｣

彼女の仕事場は家からそんなに遠くない。

俺より家を早く出る日は、今までにない。

でも、キッチンも洗面所もトイレも

どこにも姿はない。

完璧なかくれんぼみたいでちょっと謎解き気分。

どうして姿がないんだろう...なんて

少し呑気に考えていた時、

ダイニングに作られた朝ごはんと

『さよなら』

この文字を見つけた。

翔｢え......？｣

頭が真っ白になった。

何も考えられなくなった。

ひたすらに涙がこぼれてきた。

まだこれがどういう事なのかハッキリ理解したわけじゃないのに、

訳もなく、ただ、ボタボタと
床に涙がこぼれる。

涙で歪んだ景色の中でメモの隣に鍵が置いてあることを認識して、

Aはもう帰ってこないと確信した。

次に理由を考えた。

だんだん冷静になる自分がいる。

君がいなくなった景色に慣れていく自分がいた。