罪を侵して人を愛せず【鋼錬】 (ページ3)

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夢であって欲しかったページ3

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…思い出したくもない、酷い夢を見た。

夢じゃないんだけど、寝てる間に見たのだから、夢と言うべき？

なんで、今更…。

汗ばむ額を押さえながら、起き上がりざまに時計を見る。

時計の針は、うなだれている時間ではない事を告げていた。

鳴るはずだった目覚ましを止めて、髪をかきあげる。

そうしてやっと、頭が冴えてきた。

ーーーーーメイドの朝は早い。

昨日の夜に終わらせた仕事が、朝には全てリセットされてまた山のようにやる事で溢れている。

『朝というには、まだ暗いけど』

着替えを済ませ、長い白髪を高い位置に結い上げながらふと外を見ると、朝日はまだ登りきるまでには程遠いようだった。

…あの惨劇の後、父と交友のあったアームストロング家の旦那様が私を引き取って下さり、召使いとして使ってくださった。

感謝してもしきれないこの恩を返すため、毎日真面目に働いている。

そして今は、アームストロング家の末娘、キャスリン・エル・アームストロング様専属の召使いを賜っている。

とは言っても、召使いの中で1番若い私は、キャスリン様がお目覚めになるまでの時間もやる事が山積みだ。

だから、嫌な夢を見たからってクヨクヨしている暇は、ない。

『夢であって欲しかったなんて…』

何を今更、という自問自答と忘れることの出来ない夢を、乾いたドアの音と共に自室に閉じ込めて洗濯場へ走った。

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