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101: side 降谷 零 ページ8




Aと同じ部署に内定が決まり、二人で説明を聞きに行った時は天にも昇る思いだった。
勿論、その部署での仕事の厳しさはよく知っている。だからこそ、同時に、この想いは私の部分ではともかく、公の部分では絶対に出してはいけないと自分を強く律したのだ。
何よりも、この想いを伝えれば強く美しく、そして優秀なAのことを困らせるに違いないのだ。だから降谷は、プライベートであっても彼女に想いを伝えようなどと考え付きもしなかった。自分の中でひっそりと、持ち続ければ良い感情なのだと。


…なのに。

降「何なんだよ、俺の上着、抱きしめてさ…」



周りに人がいないことを確認して、ため息と共にぼやく。
故障していたらしいシュレッダーを、何とか意地で治してみせた。男は単純なのだ。好きな人の前では何だってできる。
…けれども!上着をAに渡したのに、確かに少しの出来心があったけれども!
抱きしめた状態で俺のことを見つめていたのか、そんなの、そんなの、………嬉しすぎる。


降「はぁーーーーーー。」


もう一度、肺の中の空気を全て押し出すかのように、大きく息を吐く。


空調のよく効いた廊下が少し肌寒く、ぶるり、と身体が震えた。
Aへの好きが、溢れ出してしまいそうだけれど。取り敢えず、上着を返してもらいに行くことでまた会話ができる。

まるで初恋したての中学生のようだ、と思いつつ、それでもこんな些細なことが嬉しいのだから幸せじゃないか、と思い直す。
さあ、Aに会いに行こう。ニッと笑みを浮かべて、勢いよく腰を上げた。







……ものの。
扉を開けてすぐ、先ほどまで指示をしてくれていた先輩に捕まって更に新たな仕事を言い渡された。

ちら、とAの方を見るとまだ書類廃棄に勤しんでいる。
業務時間内だ、仕事をするのは当たり前だと言い聞かせ、まだ名も知らない先輩に言われた膨大な量の書類の打ち込みを無心でやり終え、

「お前、すげえな。いや、滅茶苦茶優秀な新入りじゃねえか!助かった!!」

と言われた頃には、もう時計が20時を示していた。

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ののか - この作品のファンです!応援してます! (4月4日 22時) (レス) id: dc038c192f (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - あおいさん» ありがとうございます😭大好きって言ってくださるあおいさんがとっても素敵な方です‼︎心からそう思います!!更新頑張りますねー! (8月12日 17時) (レス) @page6 id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!もうこの作品が大好きすぎてやばいです!!!更新頑張ってください!!!!! (7月31日 16時) (レス) id: 418dda50ad (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - 光さん» 光さん!温かいコメントをまたありがとうございます☺︎やっとやっとの公安編ですー!降谷さんとのキュンキュンも書けます!これからもこの作品をよろしくお願いします! (7月27日 23時) (レス) id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続編おめでとうございます☺︎これからの展開も楽しみです。密かながら応援してます! (7月22日 20時) (レス) id: c03f77c018 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青空 | 作成日時:2023年7月19日 23時

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