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紙の山をもう一度見つめて、やはり為す術を思い付けず沈んでいた矢先、


降「A…?」


と呼びかけられ声の方に顔を向ける。
すると心配そうな顔をした降谷くんと目が合い、続いて私の前に鎮座する紙の山、開けっぱなしの前扉が目立つシュレッダーへと彼の目線が動いていき、再びその目線は私の方へと戻ってくる。


降「…故障か?ちょっと、見せてくれ、」


と言い、シュレッダーの前でしゃがんでいた私に変わって細かい箇所を触り出した。未だ制服を着ている私達だが、細かい作業に不向きと感じたのか、上着を脱いで私に渡してくる。しゃがみ込む降谷くんの後ろで見守りながら、薄い水色のワイシャツに包まれた彼の広く逞しい背中につい意識が行ってしまう。

…きゅん




……………………!!!????



…きゅん!?

あまりにこの場所に似つかわしくない感情に他でもない私が驚く。
胸キュン?私が、降谷くんに?


…いやいやいや、嘘だあ。何かの間違い、勘違い。
これは、私を助けてくれる絶対的な安心感と共に現れた降谷くんに安心したからこその胸キュンだ。うん、きっとそうだ。



預けられた制服を無意識のうちに抱きしめながら降谷くんを見守っていると、気付けば無事治してもらえたようだ。



降「…うん、これできっと、大丈……ぶ、だ。」



言葉を紡ぎながら振り返った降谷くんの、その言葉の歯切れが途端に悪くなる。目線を感じ、アイスブルーの瞳に吸い込まれるように彼の顔を見つめてしまう。カッと見開かれた瞳は、いつもよりも多く周りの光を集め、その綺麗な水色をさらに増長させている。綺麗だ、と思っていたらすぐさまに。
いきなりバッと口元を褐色の掌で覆い隠し、勢いよく立ち上がった彼は、こちらの方を見ることなくスタスタと出入り口扉から出て行ってしまった。


降/工「「…なんなんだ/のよ、一体…」」




それから、本当に無事に治ったシュレッダーを前に2時間、ずっと書類の山を片付け続けた。降谷くんの様子なんて、知らないままに。





---------------------------


降「はあーーーーー。」


ガチャ、と扉が閉まった音が後ろ手に聞こえる。
そのままずるずると、両の掌で顔を覆い隠しながら廊下に座り込む。


…危なかった。なんだ、あの破壊力。


書類整理を先輩の下で終えて一息ついたタイミングで、やはり探すのは同じ部屋にいるAの姿だった。彼女のことが好きなのだ、だから仕方がない。

101: side 降谷 零→←99



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ののか - この作品のファンです!応援してます! (4月4日 22時) (レス) id: dc038c192f (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - あおいさん» ありがとうございます😭大好きって言ってくださるあおいさんがとっても素敵な方です‼︎心からそう思います!!更新頑張りますねー! (8月12日 17時) (レス) @page6 id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!もうこの作品が大好きすぎてやばいです!!!更新頑張ってください!!!!! (7月31日 16時) (レス) id: 418dda50ad (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - 光さん» 光さん!温かいコメントをまたありがとうございます☺︎やっとやっとの公安編ですー!降谷さんとのキュンキュンも書けます!これからもこの作品をよろしくお願いします! (7月27日 23時) (レス) id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続編おめでとうございます☺︎これからの展開も楽しみです。密かながら応援してます! (7月22日 20時) (レス) id: c03f77c018 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青空 | 作成日時:2023年7月19日 23時

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