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黒色のガラケーを片手に、目深に帽子を被ってみんなのことを待つ。
隣に忠犬ハチ公がいる、待ち人のための場所。

東都、渋谷____
ハチ公の横で立ち止まっていると、目の前を歩く人の多さに圧倒される。…なるほどこれが日本の首都か。お盆休みも相まって、なんて人が多いんだ…。前世では東京と縁もゆかりもなく人生の幕を閉じ、今世では住所や学校の所在地こそ東都となっているものの渋谷に近づいたことはなかった。

「……はやく連絡してよー」

目の前を移動する人が多すぎて、私を置いていってしまった4人とずっと会えないような錯覚まで覚え始める。
連絡するわ、と言い残されたので、今縋れるものはこの携帯電話しかない。前述の4人はどこへ行ったのかというと、米花町までの乗り換えのため降りた渋谷駅でいきなり手土産を買わないと、と言い出し私を置いて買い物に行ってしまった。

「…もう。」

ナンパ防止ね♪と言いながら有無を言わさず頭上に乗せられた黒いキャップは、萩原くんのもの。実家まで4人と一緒に帰るということで、今の私は顔を隠すための眼鏡もマスクもないからとっても心細い。…現にちらちらと、目線を感じる。

「ねえお姉さん、誰かに待たされてる?」

「俺たちとお茶しない?」

「お姉さん一人でしょ?」

『……!?』

ガラケーを見つめていると、いつの間にか三人の男に包囲されていた。ナンパ!?男たちの人相、年齢を確認して逃げられそうだったら今すぐに逃げ出したい。でも相手に顔を見せると碌でもないことになりそうで、俯いてキャップで顔を隠して待つしかなさそう、と思った矢先。

「ねえ、俺たち優しいから一緒に遊んであげるって言ってんのに無視はないでしょ」

パシっと掴まれた、手首。ヒッ、と思って振り解こうとするが意外と振り解けない。
…参ったな…。

この男が掴んでいるのは私がガラケーを持っていない側、つまり私の左手首。男はおそらく利き手であろう右手が塞がっている状況だから、圧倒的にこちらの有利。振り解けない状況を利用して下に大きく左手首を下ろし、バランスを崩した男の正面に背中を入れ、背負い投げ__

ひとつ、成敗する方法があるにはあるけど…この方法だと目の前の男の右肘は悲惨なことになるだろうし、1人を倒すと二人がどう怒り出すか分からない。

「あの、私友達待ってて、困ります。」

反撃は諦めて、素直に告げる。
…警察手帳さえあればなぁ、と思うけど、今は休暇中だから生憎携帯していない。

55→←53: side 工藤 新一



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青空(プロフ) - あおいさん» ありがとうございます!!!とっても嬉しいです‼︎ (6月29日 21時) (レス) id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 大好きです!!!!!更新頑張ってください!!!待ってます! (6月19日 7時) (レス) id: 418dda50ad (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - 1日遅れですが読みました!続きが気になりすぎます!これからも応援してます! (5月29日 21時) (レス) @page41 id: 264214b0c8 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - ホワホワさん» いつもありがとうございます‼︎今日出したお話も楽しんでくださいね‼︎🌸ホワホワさんのコメントに助けられて3つも更新できちゃいました!🤭 (5月28日 23時) (レス) id: d616d8a279 (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (5月25日 22時) (レス) @page38 id: fb5e568a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青空 | 作成日時:2022年5月3日 9時

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