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教「ちょっと、いいかい。」

大学院生としてハーバード大学の大学院で犯罪心理学を学んでいた私は、人生二度目の卒業論文を書き上げるために大学へと通い、研究室の教授の元で指導を受けながら論文を進める日々を送っていた。


「なんですか?」

卒業論文も終盤に差し掛かり、この夜踏ん張れば書き終えられるだろうと目論んで無事夜が開けてしまった朝、一番に顔を合わせた教授は私を呼び止めた。

教「これなんだけれど。」

恰幅で笑うと目が無くなる、茶色く長くウェーブのかかった髭がトレードマークの教授はそう言いながら一枚のプリントを差し出した。

「…シンポジウムか何かですか?」

教「まあ、そんなところさ。」

丸く縁のない眼鏡をかけた教授は、レンズの奥に小さく収まる熊のような目を私に向けて言う。

教「明日、行ってきて欲しい。」


もう一度プリントに目を通すとそれは殆どが空欄の書き込み式のシートだった。氏名、住所、大学名と学部学科。家族構成、なんて欄まである。
紹介人、と記された欄には目の前の白衣の彼、Mark Aiden(マーク・エイデン)の署名とサインが記入済みになっていた。


「教授の頼みとあらば、仕方ないですね。」

きっとこの日の私は、徹夜明けだったが故に"疑う"という観念が没落していた。シンポジウムに参加するために必要なんだろうなと短絡的に考えて、まずは卒論を片付けることが第一だと、受け取ったプリントはデスクに積まれた書類の一番上に放って残り三行の論文の結に意識を全集中させていた。







「あれ、ケネディスクールってすぐ近くだ。」

無事に卒論を書き上げ遊び倒してやりたい気分をなんとか抑え、待ちに待った自由な日の1日目を教授のために使っている私。偉すぎる、なんて思いながら、記入欄を埋めたプリントを鞄にしまい、開催地に向かう。


「…ここ、だよね…?」

着いたのは、閑散とした廊下に面した想像の10分の1の大きさの小会議室。なんだなんだ、学会のシンポジウムではなかったのか、と混乱していると横にスッと音もなく立った細身の長身の男。

赤「ホォ、今年は君か…。まさか、日本人とはな。」

黒いニット帽に翡翠の目を持つその男は、どこからどう見たって、…そう、赤井秀一。私にとってまさかこんなところで会うだなんて予想もしていなかった人物で腰が砕けるかと思った。

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青空(プロフ) - あおいさん» ありがとうございます!!!とっても嬉しいです‼︎ (6月29日 21時) (レス) id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 大好きです!!!!!更新頑張ってください!!!待ってます! (6月19日 7時) (レス) id: 418dda50ad (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - 1日遅れですが読みました!続きが気になりすぎます!これからも応援してます! (5月29日 21時) (レス) @page41 id: 264214b0c8 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - ホワホワさん» いつもありがとうございます‼︎今日出したお話も楽しんでくださいね‼︎🌸ホワホワさんのコメントに助けられて3つも更新できちゃいました!🤭 (5月28日 23時) (レス) id: d616d8a279 (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (5月25日 22時) (レス) @page38 id: fb5e568a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青空 | 作成日時:2022年5月3日 9時

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