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シャララン、と音を立てて受信を知らせた携帯電話。
手に持っていたファンデーションを机に置いて、携帯を汚さないように小指に力を入れて慎重に開く。
「お、松田くんからか…。
あ・と・で・行く・ね、っと。」
ぴっぴっぴ、と慣れないプッシュを繰り返して送信ボタンを押す。
「んーー、…やっぱり、これじゃダメか。」
携帯をズボンのポケットにしまって、再び鏡の中の自分と向き合う。鏡の中に映った自分の、水色の瞳を何度も見て。
「もう少しガラス玉っぽい水色なんだよね…」
もっと本物に近いカラコン、どこかに売ってるかなぁ、なんて思いながら自分の変装の出来をチェックする。
特徴的な垂れ目や高い鼻、髪型、肌や髪の色なんかは教官なら欺けるくらいには上手に再現できたと思う。でも、瞳は本物には敵わないらしい。
今日のところはこの辺でおしまいにして、このマスクを剥がして首に施した色黒なファンデーションを落とさないと。松田くんが送ったメールが気持ちを急かす。
ベリベリベリ、と剥がしたマスクの下には、いつものわたしの顔。さっきまで降谷さんの顔だったのに、すぐにわたしの顔になるなんて不思議、と我ながら奇妙な気持ちになる。
まとめていた髪を下ろして、床を濡らさないように気をつけながら首周りまで洗い流す。水色のカラコンを外して、ふかふかのタオルで顔を包み込んで拭いているとブー、ブー、と再び震えた携帯電話。
「まーた松田くん…ん?」
早く行かないと、と思って廊下へと続くドアを開けながら携帯を開くと液晶に表示されていたのは"非通知"の文字。
「松田くんじゃない…。えっ、誰…?」
3日前に買ったばかりの携帯電話だから、番号を教えたのは今朝渋谷駅前での待ち合わせ用に教えた松田くんと家族だけ。
出るべきか、出ないべきか…。でも間違い電話だったら困る人がいるよね、なんて思いながら、ドアは開けっ放しでその場に立ち止まって電話に出る。
「もしもし、」
『Hello?』
「…はぁっ!?」
急に聞こえた流暢な英語に驚いて、慌てて電話を耳から離して液晶を見る。するとそこには、+1 で始まる番号。
…+1は、国際電話においてアメリカの国番号。。。何度か我が工藤家にもかかってきたことがあるから覚えてしまった。そして、この電話相手であろう男の声も。
「なんで!あなたがこの番号知ってるの!?」
そして電話口の向こうにいる男は笑いながら、こう言ったのだ。
『FBIを舐めないでくれ。』
と。
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青空(プロフ) - あおいさん» ありがとうございます!!!とっても嬉しいです‼︎ (6月29日 21時) (レス) id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 大好きです!!!!!更新頑張ってください!!!待ってます! (6月19日 7時) (レス) id: 418dda50ad (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - 1日遅れですが読みました!続きが気になりすぎます!これからも応援してます! (5月29日 21時) (レス) @page41 id: 264214b0c8 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - ホワホワさん» いつもありがとうございます‼︎今日出したお話も楽しんでくださいね‼︎🌸ホワホワさんのコメントに助けられて3つも更新できちゃいました!🤭 (5月28日 23時) (レス) id: d616d8a279 (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (5月25日 22時) (レス) @page38 id: fb5e568a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青空 | 作成日時:2022年5月3日 9時