61: side 降谷 零 ページ14
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〜♪〜〜、〜〜♪
リビングに響く、厳かで、美しく神々しい歌声。
"
讃美歌であるこの曲がこんなに似合う家に生まれて初めて来た気がする。リビングに置かれていた年代物の蓄音機をめざとく松田が発見し、Aと新一くんの許可をもらっていじくり始めた、と思えば流れた音楽。
しばらくこの曲の美しさに酔いしれて、ふと視線を感じ目を開ける。
誰だ…?と思って目を下にやると、じーと新一くんに見つめられていた。
…なんだ、何か、言ってくれ。申し訳ないが僕は小さい子の扱いに慣れていな 新「降谷さん!」
…どうしようか、僕に向けて話しかけてきた男の子。
というかこの子はさっきまで松田たちと一緒にいたのに。
どういう風の吹き回しで僕のところに一人で来たんだろう。
自分の外見が取っ付きにくいことは自覚しているから、まさか一対一で話しに来るなんて思ってなかった。
ヒロ…はだめだ。そうだった、ヒロ音楽好きだもんなぁ。松田と萩原も然りで、あいつらは音楽より蓄音機に興味津々。…頼りのAは有希子さんに呼ばれて出て行ったところ。
誰か助けてくれ、と思って辺りを見回してもみんなあの蓄音機の周りに行ってしまって助けは期待できそうにない。
「…どうしたんだい?」
人当たりの良さそうな、ヒロの笑顔を思い浮かべながら対応する。…あ、だめだ、耳の後ろの筋肉が引き攣る。
新「〜!!」
え、何…。
Aの弟、と言われてそうだよな、と納得した理由の一つにこの子の瞳がある。知的で、好奇心が強そうで、輝く瞳はAと同じもの。そんな瞳を持つなんとも綺麗な顔をした目の前の少年は、もともと大きな目をより見開いて、潤った瞳を爛々と輝かせている。
新「降谷さんの瞳、すっごい綺麗だな!」
「…へっ…?」
新「晴れた日の空の色。髪の毛も太陽みたいな金色ですっげーきれー!」
「…きれい?僕の金髪と目が、きれい?」
新「うん!」
曇りなき眼で真っ直ぐに言われて心がぎゅっと締め付けられる感覚に襲われる。
"『お前の髪変なんだよ!』"
"『瞳も変な色してやんの!ガイジン!』"
"『なっ…、!僕だって日本人だ!!』"
幼かったあの日、もう顔も覚えていない子供たちにからかわれて何年経ったんだろう。
あの日から自分の瞳が、髪が、少し苦手だったのに。凝り固まった胸の痞えが下りていき、じんわりとと心が温かくなっていくのを感じる。
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青空(プロフ) - あおいさん» ありがとうございます!!!とっても嬉しいです‼︎ (6月29日 21時) (レス) id: 5e94745166 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 大好きです!!!!!更新頑張ってください!!!待ってます! (6月19日 7時) (レス) id: 418dda50ad (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - 1日遅れですが読みました!続きが気になりすぎます!これからも応援してます! (5月29日 21時) (レス) @page41 id: 264214b0c8 (このIDを非表示/違反報告)
青空(プロフ) - ホワホワさん» いつもありがとうございます‼︎今日出したお話も楽しんでくださいね‼︎🌸ホワホワさんのコメントに助けられて3つも更新できちゃいました!🤭 (5月28日 23時) (レス) id: d616d8a279 (このIDを非表示/違反報告)
ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (5月25日 22時) (レス) @page38 id: fb5e568a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青空 | 作成日時:2022年5月3日 9時