あなたを守るよ。【降谷零】【名探偵コナン】

24: side 降谷 零 ページ26

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教「総代、工藤A！」

工「はい！！」




びしっと立って、堂々と階段を登る、女。
…まさか女に負けるなんて。
気を抜いたらすぐにその人物を睨みつけそうで、眉間に力を込めて必死で抑える。


今、背中を反らせて総代の言葉を述べ始めた。
素直にかっこいいと思う。

でもそれ以上に襲うのが、負けた悔しさ。
あそこに立っているのは自分でもおかしくないのに。
どうしてだ。なぜ負けた。何が足りない。
俺は、なぜ、工藤Aに…


景「おい、ゼロ。」


「…！？」


隣から聞こえた、ささやき声。
1番近くにいてくれて、1番安心できる声。


景「顔色、悪いぞ？大丈夫か？」

「…ああ。心配かけて、悪いな。」




でも、確かにこの人には及ばないと、そう感じた自分もいた。
今日みんなよりも少し遅れて教室に入ってきたアイツ。
とんだ美人でたまげたが、それ以上に纏う空気に圧倒された。


___経験値が、違う。



そう言わざるを得ない、無駄のない身のこなし。
誰よりも綺麗に伸びた背筋は、均整のとれた筋力があってこそ。
周りの状況を的確に察知して、うまく溶け込むあの能力。そう、アイツはまさに…親しみやすい人を装った虚像。





アイツは始めに登場した時に纏っていた近づき難い雰囲気を、一瞬で変えた。周りが圧倒されているのを感じて、柔らかく微笑み、周りに溶け込んだ。___そこまで計算尽くだと疑っているのは自分くらいだろうか？
何も考えていないお気楽者でないことは明らかだが、もしかすると天性の才能なのかもしれない。もう考えるのをやめにした方がいいのか。さっぱり分からなくなってしまった。

ああそうだ、最初に話しかけた男の勇気も讃えるべきだ。あの状況で、よくあの美人に話しかけられたなと感心する。
…萩原研二か…。…いやでも…アイツはただ、チャラい男なだけなのかもしれないな。


「…ふっ…」



どれだけ工藤のことを恨んでも、総代はアイツなのだ。事実は変わらない。しかももう負けているではないか。馬鹿馬鹿しくなって、笑えてきた。
そう、それは工藤が目を合わせてきた時。



「(次は絶対工藤の方から目を逸らさせてやる…！)」







工「……日。新入生総代、工藤A！」




決意を込めて再び意識を前に戻すと、壇上には晴れ晴れとした笑みで宣誓を終えた工藤の笑顔。





負けるものかと思ったところだと言うのに、その笑顔に一瞬にして目を奪われた。

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