第八話 魔法薬学の校外実習(前) ページ40
品質によってランクが十通りもあるのよ｣
歩いている道なりで、早くもリンシダを見つけた。どれもこれも、そこら辺に生えている低品質のものばかり。
｢つまり……この課題の評価の分かれ目は、リンの目薬の “品質” なのか。ただリンシダを集めて作ればいいと言うわけではないし、数や早さも問題じゃない｣
｢そう。そう言うこと｣
イライジャは課題の意図を読み取ったようだ。
イラムール先生のいやらしいところは、その意図を話さずに、生徒達に読み取らせようとするところ。何も考えずにこなせば、実に簡単な課題だと思えてしまうところだ。
｢確か、リンシダは湿度の高い場所に生えてるんだっけ｣
｢ええそうよ、アリア。まずは水辺……川を探すのが一番ね｣
と言うわけで、イライジャの背中をポンと叩く。あなたの出番よ、と言わんばかりに。
｢上から調べろって？｣
｢そーいうこと。よろしくね｣
イライジャはため息をついた後、いつものように魔術書を抱え、断崖を平坦のごとくスタスタと登る。
彼は【地】の申し子で、大地に繋がっているものなら、崖でも木の幹でもその足で自在に移動できる。これは魔法というより特殊な体質。ただし地の申し子は、飛行・浮遊系の乗り物や魔法が苦手とも聞いたことがある。
｢ここから五百メートル先に川がある。滝も見えるぞ｣
｢滝！ そこへ行きましょう。絶対そこがいいわ｣
アリアが首を傾げながら「滝があると、何かいいの？」と。
｢滝の近くは水滴が飛散して常に湿っているでしょう。これ、リンシダが育つベストな環境が揃ってるの。教科書には載ってないけどね｣
イライジャが下りてきて、彼の案内に従い進むと、途中で巨大な岩に出くわした。これのせいで道が塞がれている。右側が断崖で、左側が川という、避けられない状態で。
｢そんな。あと少しでベストポジションなのに！｣
｢これは自然の岩ではなく、人の手が加わってここに置かれたものだ。魔法の痕跡がある｣
ノアがその魔法のコンタクトレンズですぐに調べてくれた。
｢教師達が置いた障害物か。この道を諦めて一旦戻るか？｣とイライジャ。
｢いや、進んだ方がいいだろう。障害物があるということは、この先は
｢破壊ができないなら、登っていくしかないってこと？ 誰もがイライジャのようにはいかないわ。どうしよう……｣
｢だったら、ここは私に任せて｣
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
